フランス人のルイ・マル監督が米国ニュージャージー州にある賭博の町アトランティック・シティを舞台に映画化しました。 しかし製作国はフランスとカナダで映画の言語は英語という混沌とした映画。 自分の国フランスをさておきなぜに舞台が米国なのかというと、1976年から1987年の11年間 ルイ・マル監督は米国に移住していたということが理由だと思います。 私生活においてもアメリカ人女優のキャンディス・バーゲンを妻に迎えました。 監督にとっての母国フランスはどのような位置付けがなされているのでしょうか。
タイトルのアトランティック・シティは大西洋(Atlantic)に面したカジノタウンで、ギャンブル好きな人間が世界中から集まってくる特殊な町だったのだろうと思われます。 カナダの田舎を飛び出した主人公サリーも、将来の金持ちを目指してカジノのディーラーとしての才覚を鍛えていました。 そんなサリーの元を訪れたのが、故郷で結婚していた彼女の夫デイブと夫が妊娠させてしまったサリーの妹の二人。 身重だった妹を追い返すこともできず、迎え入れたのが発端で大きな事件に巻き込まれてしまいます。
サリーが住んでいた部屋の隣に住んでいた老人が体格のいいルーというバート・ランカスター扮する男。 彼は近所に住む貧民街の黒人たちのわずかな金を預かって、何とか儲けてあげようとしていた心優しい面がありました。 また、かつての友人だった男の未亡人(グレース)の世話までしているという特異体質のルー。 彼にとってはほとんど無関係と思われるグレースが、ルーを召使いのようにこき使っています。 それでも怒らず適当にグレースの相手をしているルーは、男から見ればきっと異端児的存在。
そんなルーが毎夜 楽しみにしていたことは、レモンの汁を皮膚に塗りたくっている隣人のサリーを覗き見すること。 いくつになっても男であり続けることができたルーが、ヒョンなことで巻き込まれた麻薬の売人。 小児用下剤を混ぜた白い粉を堂々と売りさばいて大金を得た自称 元ギャングのルー。 ファッションも決まり、老人の目から子供のような目に変わっていきます。 そんな大金をめぐって争いになったのが女を感じさせてくれた娘のようなサリー。
彼女の夢は、フランスの南東端にあるモナコの公設賭博場でディーラーの腕を磨くこと。 そのためにフランス語の勉強もしていました。 お金が必要だったサリーとギャングゲームの虜になってしまっていたルーは、互いの打算で動きます。 打算的な関係を確立したサリーとルーの別れは、言葉を介さない目だけの独特のカッコ良さがありました。 若いサリーは情愛に流されず、自分の好きな道を選択します。 それを応援したのは父親と母親の両面を持っていたルーだったと思います。
* 監督 ルイ・マル * 1980年 作品
* 出演 バート・ランカスター スーザン・サランドン ケイト・レイド
映画の初めも最後も、アトランティック・シティにあるビルが解体されていました。