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- 2022.04.05 Tuesday
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「わたしは黄泉国で吐きそうなぐらいの汚いものを見てしまった。」
こう言ってイザナギノミコトは禊に臨む。
持ち物を捨て衣服を脱いで裸になる。
捨てた持ち物や脱いだ衣服から多くの神々が生まれた。
そして
最後に汚いものを見た目と汚いものを嗅いだ鼻を洗う。
捨てて脱いで洗う過程で多くの神々を独りで誕生させたイザナギノミコト。
汚い国(妻の国)に触れた結果のなせる業だった。
神に禁じられていた知恵の実を食べたアダム。
飲み込む寸前、その実を喉にひっかけたことから
喉仏を Adam’s apple と言うようになった。
だから知恵の実の正体はリンゴ。
継母に毒リンゴを食べさせられ仮死状態にあった素直な白雪姫。
ひょんなことから喉につまっていたリンゴを吐き出し
白雪姫は息を吹き返す。
イブはというと
何のひっかかりもなしにゴクンと飲み込んだ?
ひっかかったままだと仏になってしまう。
ちゃんと生きるには吐き出すことが大事。
女のいない男たちになるのがどれくらい切ないことなのか、
心痛むことなのか、
それは女のいない男たちにしか理解できない。
(村上春樹の女のいない男たち)
今は昏睡状態にある憬れの女性が好きだと言っていた
サイレント映画「縮みゆく恋人」を観たベニグノ。
意識のない彼女にそのストーリーを熱く語りかける(talk to her)。
この一方的ではあるけれど本気のコミュニケーションで
植物状態にある彼女は妊娠。
通じていなかった二人が通じ合った結果のできごと?
しかし一般的にはレイプと見なされ
犯罪者ベニグノは女のいない男たちの一人になってしまう。
一方眠り姫のように眠り続けるだけの彼女は
出産を機に目覚める。
ベニグノの彼女に対する切ない(コミュニケーション不能)語りかけが
結果として彼女を目覚めさせることになる。
でもベニグノに愛され続けた(一方的ではあったけれど)彼女は
ベニグノの愛を知らない。
女のいない男になったベニグノは
この世界に生きる意味を見出せずに死んでしまう。
ベニグノはきっと縮みゆく恋人になって
愛する彼女の子宮の中で生きているのだろう。
スペインのアルモドバル監督が描いた
映画 『トーク・トゥ・ハー』 のベニグノの人生は
母の世話と愛する女性の世話に徹していた。
自分が母を彼女を愛していればそれでいい。
彼は彼の命を生きた。
足が立たず(横になるしかない)醜い顔立ちだったヘバイストス(火を使える鍛冶神)は
生みの親(山を住処とするヘラ)によって海(山の汚物を受けとめる)に投げ捨てられる。
死ぬ運命だった彼を救ったのは横になって流れるオケアノスの娘エウリュノメー。
彼女はカオスの中に初めて裸で存在した原初ギリシャの創造神で、
北風(ボレアス)のママでもある。
ということは
何も区別がつかないカオスの中に最初に吹き荒れたのが北風。
モノを見る(視覚)より皮膚で感じる(触覚)ことが
天地創造以前のカオスに足を踏み入れる第一歩ということ。
有限なる存在すべてを超越する無限を象徴している。
こう言ったのは妻だけを愛したオルフェウス。
太陽神アポロンを崇拝する民族として知られる
ヒュペルボレイオス(北風の彼方に住む人々)は
永遠の光に包まれ、
幸福に満ち溢れた地で自由に空を飛び、
平和に暮らしていたという。
海上のはるか彼方にあるという補陀落を目指した
補陀落渡海の精神と似ている感じ。
足が立たなかったり醜い人たちを捨て去る差別社会は
カオスのこっち側で
幸せに満ち溢れたカオス(北風)の向こう側には
肌と肌で心が通じ合う熱い世界があるのかもしれない。
森の中で方向性を失ったアクタイオン(狩人)は
さ迷っているうちに森の奥深くにまで足を踏み入れていた。
そして彼は見た。
見てはいけない裸(秘密)のアルテミス(女狩人)を。
アルテミス(月の女神)のホントの顔を知ったアクタイオン。
彼の人生はそこで終る。
猶みたし花に明け行く神の顔 芭蕉
100年の時を経て眠り姫が目覚めたように
真の目覚めは時間がかかる。
一日の疲れに安らぎを与える眠りの神ヒュプノス。
彼が与える最後の眠りが人の死ということになる。
蛇に従い知恵の実を食べたアダムとイヴ。
彼らに100年の眠り(死)がもたらされていれば
あるいはその時に彼らが蛇を殺していれば
世界はもっと違っていたのだろうか。
眠りから生み出される多くの夢が正夢になって
今の世界を構成している。
ぶどう酒を飲んで酔っ払い裸になって寝ていたノア。
そんな彼(父)を見たハムはセムとヤペテに告げる。
ノアの秘密(裸になって寝る)を知ったハム。
ハムに気を許したノアは裸(自分のすべて)を見せる。
裸を見た(秘密を知った)ハムは他者にそれを漏らす(ノアを売る)。
目覚めたノア(神の代弁者)は言った。
カナン(ハムの血を受け継ぐ末っ子)は呪われよ。
理由があろうがなかろうがこの世界は神様の言う通り。
かけられた呪いはいつか解ける。
原ギリシャの創造神エウリュノメー(水の神)はカオスの中に裸で存在し、
激しい独りダンスで宇宙の万物を生み出した。
一方オリンポスの統治をめぐって骨肉で争った
ゼウス、クロノス、ウラノス(すべて男)よりもずっとずっと前から
彼女は存在した。
神に背いて知恵の実を食べたアダムとイヴは裸のままで存在できず、
神を遠ざけ神から隠れるような動きをしている。
そんな二人が生み出したものは
嫉妬を発端とする殺人事件の加害者カインと被害者アベル。
裸(無垢)で生まれた人間は裸で死ななければいけない。
生と死の間は裸になるための精進の日々かもしれない。
ギリシャの創造神話の異説(ペラスゴイ人の創世神話)として
次のような話がある。
カオスの中に最初に裸(恥とは思わない?)で存在した
エウリュノメー(海流オケアノスの娘)は
空と海を分離してから波の中で踊り狂い
その動きから北風(冷たい)を発生させた。
続いて北風を両手で捕まえ
激しくこすり伸ばしてオピオン(盲目の蛇)を生み出し
その後も体を温める為に踊り続けたが
欲情したオピオンと交わって身籠り
鳩に姿を変えて波の上に宇宙卵を産んだ。
また冥界を往還したオルフェウスは
世界を創造したのはオピオンだとする話を残している。
原初の世界は卵が一つだけあり
この卵からオピオンが生まれた。
あるいは無が動き出し
無の嵐がオピオンになった。
オピオンは無眼(善悪すべてをひっくるめて)の蛇であり
その体から光と闇と愛
その動きから熱や風が生まれた。
最終的にこのメクラヘビはどうなったか?
妻であり母でもあるエウリュノメーに踏み付けにされ、
地下深くの洞窟に幽閉された。
死んではいない。
目で判断しない(できない)オピオンを目覚めさせ
聖書の蛇と対決させたい。
エデンの園の中央には善悪を知る木と命の木がある。
女がその木を見ると
それは食べるに良く
目には美しく
賢くなるには好ましいと思われたから
その実を取って食べ
また共にいた夫にも与えたので
彼も食べた。
命の木(ぱっとしない?)には注目しないで
善悪を知る木の実の見栄えにひかれたイヴ。
食べれば死ぬと言っていた神と
食べても死なないと言っていた蛇。
イヴの心を映す鏡がもし神なら
イヴは死ななければいけなかった。
神とともに歩もうとするなら
彼女は死ぬべきだった。
原罪とは
死ぬべきときに死なないこと?