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- 2022.04.05 Tuesday
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人間というものの深淵なテーマでしかも答えが出ない“罪と罰”が描かれていると感じた映画。政治家だった主人公スティーヴンはある女と出会い、マットウな社会人から堕ちていきます。しかし彼を誘惑した女は堕ちなかった。結果として彼が愛した女は大したことはなかったというのが正直な感想。しかし見かけのスティーヴンで終わるのではなく、ホントの自分を知るキッカケを与えてくれたのがこの女。
会話のユーモアや互いの趣味などの話は一切なく、肉体だけが先行する異様でバトルのような二人の肉体関係。狂気のような激しさで肉体の合一を図ろうとする二人・・ 錆びて動かなかった運命の歯車が突如として回転し始めたような怖い空気を内包していました。
運命的なナニカを秘めていたスティーヴンは、妻・息子・娘を持つ四人家族。もしアンナに出会わなければ出世もして社会から認められる男になっていたと思います。
でも神あるいは悪魔は彼を放っておくことはしなかった。アンナは15歳で兄を自殺で失うという辛い体験があり、その寂しさを癒すため男遍歴を繰り返してきた孤独に対応できないタイプかな。アンナが自分自身で解決できない孤独は、結局 彼女の周囲の人たちを巻き込み彼らの人生を転落に導くという破滅物語に向かっていきます。
しかし実際の彼は権力より不確かな愛を求めていたようにも感じます。
そして彼のストレートな部分を見抜いていたのがアンナの母。マーティンとの結婚を控えてスティーヴンに身を引くように忠告し彼もその忠告を受け入れアンナと別れようとしていたのに、彼女の妖艶な誘惑に負けてしまうチョットかわいい男がスティーヴン。彼の真っ直ぐなキャラクターは政治家より芸術家に向いているのかも・・真っ直ぐ過ぎる性格でこの世を生き抜くことはちょっと難しい。自分に降りかかった運命に逆らわなかったスティーヴンの末路は侘しいものでした。
「あなたと一緒にいたいからマーティンと結婚するのよ」という言葉を発したアンナ。この段階でスティーヴンはアンナの自己中を見抜かなければいけない。女の目から見てもアンナの性格は悪い! 男に愛を与えるどころか男を破滅させる方向に導くように感じます。悪魔(アンナ)に魅入られた人生は破滅するしかないということなのかな。
自分を支えてくれた家族に対して大きな罪を背負ったスティーヴンは日常世界から消えます。 マーティンにもらった写真を拡大して映画のように眺めていたスティーヴン。彼が何度もアンナに質問していたのがこの言葉“君は何者だ?” この答えを知りたいがために狂気の道を突き進んでいった男が選んだのは過去のすべてを捨て去ることでした。自分が犯した罪を償おうとしたスティーヴン、そして罪の意識もなく次の罪を重ねるアンナ。余韻を残す幕切れで映画は終わります。
* 監督 ルイ・マル * 1992年 作品
* 出演 ジェレミー・アイアンズ ジュリエット・ビノシュ
★ 1932年生まれのフランス人監督ルイ・マルは、若い頃はもちろん還暦を迎えてからも異彩を放つ映画を社会に突き付け世界の映画ファンに影響を与えました。
YouTube - Damage US Trailer - Juliette Binoche 1993