1917年の合衆国ルイジアナ州ニューオーリンズの歓楽街が舞台になっています。 ルイジアナ州はかつてフランス領だったせいで、英語とフランス語が公用語に用いられ 民法はナポレオン法典が用いられるというアメリカ南部にあってフランスの香りが残されていた場所でした。 ニューオーリンズという土地でジャズが栄えた要因は、フランスの血が色濃く残されていたからではないかと思います。
ジャズの発祥場所が米国南部に位置するこの辺りで、軍港として栄えていたニューオーリンズにあったサロン風の高級売春宿で主にジャズが演奏されていた時代が背景になっています。 もちろん演奏者は奴隷としてアフリカから連れてこられた黒人で、娼婦と黒人が絡むジャズは、悪魔的で退廃的な音楽という風に社会から見られていた時期がありました。
ニューオーリンズジャズが刻むリズムは気だるさがあり、シャキッとする気分ではありません。 朝からベッドでグズグズしているような時に合うリズムで、人間関係が複雑に絡んだ、ややこしい仕事に取り組もうとする気分にはさせてくれません。 スペインなどで習慣化されているシエスタ(昼寝)に合うのがニューオーリンズジャズ。
そんな音楽を産み出したのがある面 売春宿というシステムでした。 ココで生活していた流れ者の女たちの一人ハティとその娘(12歳に設定)ヴァイオレットが主人公。 ヴァイオレットの父親は誰か分からず、またしてもハティは妊娠して出産する事態を迎えていました。 娘のヴァイオレットは同居する娼婦たちの動きを観察して、12歳の餓鬼であるにも関わらず 男を誘う眼と男に投げかける言葉と彼女のファッションは一人前の女・・ でもバストは平らなスリム系。 ロリコン好みの人は是非 このサロンへどうぞ!
お金持ちの男たちばかりが集まるサロンに、ある日一人のカメラマン(ベロック)が訪れました。 お金を払って写真を撮るだけで、女を買おうとしないベロックに興味を持ったのがヴァイオレット。 彼女の母親はすでに彼女を捨てて、馴染みの客と結婚生活を初めていました。 見様見真似で男と対峙して我がままブリを発揮しているハティの一人娘の姿はまだまだあどけない子供。 しかししだいにベロックも彼女の大胆さに惹かれていきます。
そしてヴァイオレットにプロポーズ・・ 快く承諾した彼女と大人の男との結婚生活は そんなに長く続くわけはありません。 娘と父親関係の二人が過ごした時間はまるでシエスタ。 同時に時代の波で、この辺りの売春宿が一掃されることになりました。 娼婦の移動も含めて黒人たちが演奏していたニューオーリンズジャズの活動拠点も移されることになります。
売春宿と結びついていた気だるい雰囲気が強かったジャズは、その後 場所を北部のシカゴに移して違った要素のジャズが演奏されるようになっていきます。 しかしジャズの生まれはニューオーリンズで、その時代に関わっていた娼婦や黒人が好んだのが、気だるい感じのサロン風室内楽でした。 “プリティ・ベビー” という映画は、過ぎ去って戻ることのない気だるい時間を巻き戻してゆったり楽しませてくれるシエスタのひと時でした。
* 監督 ルイ・マル * 1978年
* 出演 キース・キャラダイン スーザン・サランドン ブルック・シールズ
1990年代のプリティ・シリーズとは何の関係もないこの映画は、女性のカラダはある年齢を境にこんなに変化してしまうということがスゴク分かる作品。