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サンセット大通り

           

生前プール付きの豪邸に住みたいと思っていたジョー・ギリスの希望は意外な形(プールに浮かぶ死体)で叶えられます。アメリカ西部(ロサンゼルス)にあるヤシの木の並木道で有名な“Sunset Boulevard”を駆け抜けていくパトカーがオープニング映像。映画産業の中心地ハリウッドに近いサンセット大通りの一角にノーマルとは言えない女優ノーマ・デズモンドの豪邸があり、時間が止まったような屋敷に紛れ込んでしまったのがウィリアム・ホールデン扮する映画の脚本家ジョー。お金に困っていたジョー(厳しい現実)とお金に困っていなかったノーマ(映画のような夢の世界)。
環境が違い過ぎたジョーとノーマは折り合うことができず悲劇は起こります。この物語の進行役を務めるのがプールに浮かぶ死体となったジョー。こうして話は6ヶ月前に溯り、ジョーは自分が死ぬことになった経緯を語り始めます。

              
実際にサイレント映画の女優だったグロリア・スワンソンと映画のノーマはまさに現実と映画が交錯している感じで、不自然な時間の歪みが丁寧に且つ不気味に描写されています。まず気になる存在がこの宮殿のような家の執事マックス。彼は三回結婚したノーマの一番初めの旦那で、彼女と離れたくないので執事になったとか・・ 時代の変化に対応できず、未だにサイレント時代の女優であり続けた妄想癖のノーマ。同居人マックスは現実を直視しない彼女を守ることが自分の務めであるかのように忘れ去られた存在のノーマにファンレターを書いています。現実を見ようとしないノーマはマックスのおかげで好きな夢を見続けることができました。そんな二人の間に割り込んだのが現実直視型の貧乏ジョー。

             

映画女優だったノーマと同じようにジョーもまた脚本家として映画に携わっていました。相反するタイプに見えた二人の共通点が作り物である映画。サロメの主役として再び脚光を浴びることを望んでいたノーマは過去に何度か自殺未遂を図ったことがあり、彼女の屋敷にあるすべての部屋に通じるドアには鍵がありません。表現を変えると彼女は自分の本心をさらけ出し男の愛を求め過ぎたのかも。結局三回も結婚と離婚を繰り返し傷の絶えないノーマに最後の最後まで付き従った男の器は名前と同じようにマックスでした。そして猿の葬儀屋に間違われたジョー・ギリスはノーマにとって4番目の男。


オープニングのクレジットから雲がかかったような不鮮明な映像で、
その不鮮明さは物語の進行とともに異様な空気を漂わせていきます。初めはノーマが書いたサロメの原案の修正を任されたジョーですが、次第に彼の私生活にまで侵入するノーマ。彼女の束縛に耐えられなくなったジョーは毎晩邸宅を脱け出し、ある女性と会っていました。彼女も映画の脚本家を目指していて、自分の意見をズバッと言う賢い女性ベティ。過去に執着して生きるノーマとは違い、ベティは現実を生き現実に仕事をこなしています。婚約者がいながらジョーに恋してしまったベティ。どっちつかずのジョーが最後に選択するのは?
            

健全な空気とは正反対の淀んだ空気が初めから最後まで充満しているにもかかわらず、そのイヤ〜な空気にハマって目が離せなくなってしまう不健全映画。しかし魔力のある脚本で映画は見事に成功しています。映画はやはり脚本がすべて? ノーマもジョーもベティもこだわっていたのが裏方の仕事だった脚本。気分を害する脚本なのに映画の魅力はなかなかのもの。空気の淀みは半端ではなく深呼吸すらできない雰囲気。途中で気分転換の深呼吸をしようものなら窒息死してしまいそう。

 
ノーマの願いだった映画出演が最後に意外な形で訪れます。それはツクリモノの映画ではなく現実の殺人者ノーマに向けられたスポットライト。この時も彼女を支えていたのがマックスで、狂気の現実はまるで映画のよう。最後にノーマが監督に言います。「アップにして」 しかしカメラが近付けば近付くほど彼女の顔はぼやけ、最後は煙のように消えてしまいます。再び映画の主役を演じることを念願していたノーマ。彼女のぼやけた顔が無声映画の終焉を告げているかのような終わり方で、聖ヨハネの首を欲しがったサロメとは違っていました。彼女が欲しかったのは男の頭ではなく自分の名声だったのでは・・

* 監督 ビリー・ワイルダー  * 1950年(米)作品

* 出演 ウィリアム・ホールデン  グロリア・スワンソン

★ 暖炉の前で横たわっていた猿はインパクトがあった。


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  • 2017.09.05 Tuesday
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  • 22:40
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