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ワン・ツー・スリー

    

始まりと同時に流れ出すのがせわしい♪剣の舞♪。この曲はソ連のハチャトゥリアンが作曲したもので、映画の主題(米ソ対立)の一翼を担っています。自分たちの国を持たない民族クルド人が剣で戦うイメージを表現した曲らしい。映画に登場する人物もみんな音楽と同じようにせわしく喋りまくり動き回り、観る者に息つく暇を与えないまま映画は終ります。しかし不快なせわしさではないのがワイルダー監督のなせる技で、主人公マクナマラが勤務するコカコーラ社のようにスカッとするせわしさがこの映画の柱。確かこの時代(1961年)に活躍した政治家にマクナマラとかいう人がいたような・・ そのマクナマラに扮したのが圧倒的喋りで周囲をリードするジェームズ・ギャグニー。

                                     
舞台となったベルリンは映画が製作された1961年東西に二分され壁が形成されています。ともに譲り合わない資本主義と共産主義の対立が鮮明になりつつあった時代の風刺映画ですが、堅苦しい政治や思想をお祭り騒ぎにして終始一貫したドタバタ喜劇で最後まで突っ走ります。出世に意欲を示すマクナマラは敗戦による復興のため民主主義社会を目指していた西ベルリンに赴任。彼の部下シュレマーはヒトラー体制に染まり、マクナマラが注意しても踵を鳴らすあの癖がなかなか取れない。ドイツ人気質の従業員はというとマクナマラに敬意を表し、立ったり座ったりで忙しい。ヒトラー色に染まった西ドイツのお国柄が鮮明に表現されていました。東ドイツは米国に反発するデモ行進が日課らしく、変わる西に対し変わらない東の廃墟が印象的。

                     

物語は出世に意欲を示すマクナマラが社長の娘の面倒を見ることになり、その娘スカーレットと彼女の恋人オットー(共産党員)に振り回される内容。清く正しく美しくをモットーに掲げるオットーはスカーレットの目に新鮮に映り、二人は結婚。出世意欲に燃えていたマクナマラはスカーレットの勝手な行動に激怒し、どこの馬の骨か分からんオットーと対立。互いに譲り合うつもりはないようで、オットーに対するマクナマラの買収作戦は失敗。 “ 資本主義は月夜の腐れニシンだ・・光り輝くがクサイ。ソ連のミサイルは金星に、アメリカのミサイルはマイアミビーチに・・ ” というのがオットーの独断的意見。

          
買収に屈しないオットーを排除しなければ出世どころか自分が排除されてしまうと感じたマクナマラ・そこでオットーをアメリカのスパイ(相手国から言わせるとアメリカ帝国主義者)に仕立て上げ、東ベルリンで監獄送りになるよう画策。モスクワで妻と幸せな生活ができると信じていたオットーは逮捕され、マクナマラの裏工作は成功します。その後押しをしたのがアンクル・サム(合衆国を象徴する架空の人物)が飛びだす鳩時計。しかしスカーレットがすでに妊娠していていることを知った彼は予定を変更し、新たな名前でアメリカ側の人間に仕立て上げようとするのが裏工作に精を出す資本主義崇拝者マクナマラ。振り回されていたのはバラ色の生活に憧れていたオットーだったのかも。

      

その彼が東ドイツ警察の取り調べ室で拷問ともいえる尋問を受けていたシーンで思ったのは西も東もこの点では共通しているような感じ。スパイ容疑のオットーは何が何でもアメリカのスパイでなければならず、ノーは一切通用しない。眠りを奪われ朦朧状態にあったオットーはついに相手側の筋書きに合わせ、アメリカのスパイであると嘘を暴露。容疑者を吐かせるための手段は眠らさないことと相手が嫌がることを繰り返し行うことで、密室で繰り広げられる世界共通認識がコレ?


ドタバタ喜劇の裏に散りばめられた監督の皮肉は超一流。
最後はますますドタバタに拍車がかかり、伯爵オットーに変身させるための磨き上げをみんなに指示するマクナマラ。抵抗していたオットーも次第にその気になっていくし、冒頭で紹介されていた三人のロシア人のうちの一人は資本主義側に亡命し「裏切るか裏切られるかのどっちかだ。」と口走る始末。マクナマラの秘書だったブロンド娘に心酔してしまったようで、自分の都合で動くのがこの社会。

 
共産主義を信じていたオットーはこの事実を知り絶望寸前。しかしスカーレットの両親を前にしたオットーは伯爵として社会情勢をこんな言葉で表現しています。「希望はないが深刻ではない。」と。 マクナマラの精神が乗り移ったかのように喋り続けるオットーと自分の引き際を知るマクナマラ。英国支店長を期待し持ち歩いていた傘をオットーに手渡し、次の赴任先に向けて出発。妻の期待通りマクナマラは故郷アメリカに帰ることでハッピーエンド。


* 監督 ビリー・ワイルダー    * 1961年(米)作品

* 出演 ジェームズ・ギャグニー   ホルスト・ブッフホルツ


★ ワン・ツー・スリーのせわしい時の変化に対応できなかったパンナムの機体が使われていました。


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  • 2017.10.26 Thursday
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