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- 2022.04.05 Tuesday
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第二話でドクターを振り回したドロタ同様、第三話でも女性がかつての男を翻弄しています。設定された時はクリスマス・イヴで、男を振り回す女性の名前がエヴァ。
そんな彼女に振り回されるのがタクシー運転手のヤヌーシュで、彼はサンタさんの格好をして家族(妻と二人の子)にプレゼントを用意する子煩悩なパパ。しかし優しいパパ(夫)の顔の裏にはもう一つの男の顔がありました。ヤヌーシュにとっては過去の女だったはずのエヴァ・・ しかし実際は忘れようとしても忘れられない恋の相手だったのかも。
ヤヌーシュの家の電話が鳴る少し前、彼は教会でエヴァを見かけていました。過去の男に唐突な電話をかける前、自ら伏線を敷いているのがエヴァ。彼女が執筆したクリスマス・イヴの脚本をもとに、聖なる日が演出されようとしていました。主役をつとめるエヴァの相手役が今は幸せ家族の一員となっていたヤヌーシュ。幸せに恵まれなかった女が幸せに恵まれた男の家をかき回す感じで、三角関係にあった過去の男女は立場を変え現在も似たり寄ったりの形で再会しています。
心の奥をさらけ出すエヴァ、そんな彼女に惹かれ嘘に付き合うヤヌーシュ。腐れ縁の二人の間にあるのは不安定なもろさで、安定を優先させる結婚とは縁遠い。しかし時間に押し流されるだけの日常に埋没しないという特性を持つエヴァは、自分だけの手作りクリスマス・イヴを持とうとしていたようにも感じます。そして最後に明かされるのが孤独に耐えて生きてきたエヴァの生死を委ねた賭け。翌朝7時まで彼が自分と付き合ってくれれば、これから先も一人生きていこうと・・ もしそうでなければ睡眠薬で死ぬ覚悟をしていたエヴァ。
“安息日を覚えて、これを聖とせよ”というのが十戒のテーマで、エヴァがこれからの日々を生きていく糧(安息日)になったのがこのクリスマス・イヴ? しかし寝ずに旦那を待ち続けたヤヌーシュの妻にとっては最悪の夜だったはず。三角関係がもたらす悲劇で幸せになれる人は誰もいない。それでも三角形は聖なるカタチ? 二人きりでは見えてこないドロドロが見えてくることこそ聖に近付く第一歩かな。
* 監督 クシシュトフ・キェシロフスキ * 1988年 作品
* 出演 ダニエル・オリブルフスキ マリア・パクルニス
★「自分の家が見つからない」と言っていた浮浪者は孤独を知る者の代弁者。