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- 2022.04.05 Tuesday
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人間同士のコミュニケーションは全くなく通常ではなかなか聞き取れない自然界の生き物が生じさせるユニークな呼吸音に感動した映画。まずオープニングのクレジットが無音で、冒頭シーンは薄暗い野原。そこに出てくるのが鼻をクンクンさせながら餌を探しているアナグマくん。鼻息荒くアチコチ餌を嗅ぎ回っていた彼はトロトロしている間に車に轢かれてあの世行き。オレンジ色の車をぶっ飛ばしていた少女(この時は男に見える)がアナグマの加害者で夜が明けきれない薄暗い時間帯の事故でした。
偉才を発揮するルイ・マル監督(当時43歳)の確かな偉才を体感できるワンダーランド映画。ほとんど分からんストーリーなのに映像から発散される不思議な吸引力で視覚・聴覚が刺激され、見始めると一気に観てしまいたくなる気分にさせられました。爆弾音が渦巻く現実から全力疾走で駆け抜けるのがリリーの運転する車。奇妙な館に侵入する前に彼女は銃殺される女性を目の当たりにしています。ルイ・マルが設定した戦場は男と女の闘い? 男性兵士が女性兵士を銃殺する前に抱擁しているシーンがあり、意味深な戦場風景でした。
特にベッドに寝たまま無線で意味不明の言葉を発していた婆さんが一番不気味!
大きなネズミだけを話相手に何年も過ごしているような感じで、宇宙のノイズをチェックしながらワカラン相手に何かを報告しています。“このバアサン何者やねん!”と大声で叫びたい気分で、ますます映画から目を離せない状態に・・ オカルト的要素とは違う淀んだ空気が充満している婆さんの部屋には多くの時計がありました。
時間に縛られているようには見えん生活をしてるにも関わらず、このバアサン解放されていません。そして部屋中の鳴り出す時計をすべて窓から放り投げるのがリリー。
彼女こそ何にも縛られていないものの象徴かも。
乳房を消毒してオッパイを吸わせる意味は何なのか。多くの画家が表現した“慈愛”というテーマになっていたのが複数の赤ん坊に乳房を与える女性でした。突き抜ける少女リリーは慈愛に溢れた女性ということか・・ そうなるとリリーの前に寝ていた無線で交信するあのバアサンも慈愛に溢れていたことにもなり、突き抜ける不気味さと理解不能の混乱を同居させたまま映画は幕を閉じます。しかし最大の謎はリリーが差し出す乳房。女を捨てて慈愛に満ちた母親になったというメタファーとして納得させようと思ってはみたものの、リリーが婆さんに乳房をふくませるシーンは二度と見たくない。
* 監督・脚本 ルイ・マル * 1975年(仏・西独)作品
* 出演 キャスリン・ハリソン テレーズ・ギーゼ
★ 夜空にあってもナイに等しいのがブラック・ムーン。
YouTube - Black Moon - Talking Unicorn