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    ブラック・ムーン

    • 2010.06.18 Friday
    • 22:15
              

    人間同士のコミュニケーションは全くなく通常ではなかなか聞き取れない自然界の生き物が生じさせるユニークな呼吸音に感動した映画。まずオープニングのクレジットが無音で、冒頭シーンは薄暗い野原。そこに出てくるのが鼻をクンクンさせながら餌を探しているアナグマくん。鼻息荒くアチコチ餌を嗅ぎ回っていた彼はトロトロしている間に車に轢かれてあの世行き。オレンジ色の車をぶっ飛ばしていた少女(この時は男に見える)がアナグマの加害者で夜が明けきれない薄暗い時間帯の事故でした。


    偉才を発揮するルイ・マル監督(当時
    43歳)の確かな偉才を体感できるワンダーランド映画。
    ほとんど分からんストーリーなのに映像から発散される不思議な吸引力で視覚・聴覚が刺激され、見始めると一気に観てしまいたくなる気分にさせられました。爆弾音が渦巻く現実から全力疾走で駆け抜けるのがリリーの運転する車。奇妙な館に侵入する前に彼女は銃殺される女性を目の当たりにしています。ルイ・マルが設定した戦場は男と女の闘い? 男性兵士が女性兵士を銃殺する前に抱擁しているシーンがあり、意味深な戦場風景でした。

     
    リリー自身もロングヘアーを隠して帽子をかぶっていたため初めは男に見えてしまいます。あるいは男に見せなければ殺されるという自分の置かれていた状況を知っていたのがリリー? 一目散に逃げ出す彼女の車はガタガタ・・ それでもガムシャラに突き抜ける彼女の精神力はスゴイ。“理屈の通じない別世界”だと冒頭で紹介するのが脚本も手掛けたルイ・マル。確かにリリーの突き抜けるような行動はこの世でドスンとぶつかっている人たちとは全く違うもの。理屈抜きの奇妙な館へ迷い込んだリリーが目にしたものは“不気味”という一言に尽きる。

                  


    特にベッドに寝たまま無線で意味不明の言葉を発していた婆さんが一番不気味!
    大きなネズミだけを話相手に何年も過ごしているような感じで、宇宙のノイズをチェックしながらワカラン相手に何かを報告しています。“このバアサン何者やねん!”と大声で叫びたい気分で、ますます映画から目を離せない状態に・・ オカルト的要素とは違う淀んだ空気が充満している婆さんの部屋には多くの時計がありました。
    時間に縛られているようには見えん生活をしてるにも関わらず、このバアサン解放されていません。そして部屋中の鳴り出す時計をすべて窓から放り投げるのがリリー。
    彼女こそ何にも縛られていないものの象徴かも。

     
    蛇・百足さらに羊・鶏・豚そして最後に黒鷲が登場するシンボリックな展開のなかで興味深いのが純潔を象徴する一角獣の会話。リリーとだけ会話する一角獣は154年後に戻るとか言いながらこの屋敷を去ります。しかしこの館の主がリリーと入れ替わった途端、再度(154年も経ったの)登場。この世には存在しないはずの一角獣は理屈が通じない世界の生き物のようで、宇宙語を理解しないと一角獣の心は分からない。そして一度は去った一角獣がリリーのベッド(以前あのバアサンが寝てた)のそばに・・ その後“ちょっとお待ちを”というリリーの言葉でエンドになるのですが、問題はそのちょっとお待ちを・・の後。


               

    乳房を消毒してオッパイを吸わせる意味は何なのか。多くの画家が表現した“慈愛”というテーマになっていたのが複数の赤ん坊に乳房を与える女性でした。突き抜ける少女リリーは慈愛に溢れた女性ということか・・ そうなるとリリーの前に寝ていた無線で交信するあのバアサンも慈愛に溢れていたことにもなり、突き抜ける不気味さと理解不能の混乱を同居させたまま映画は幕を閉じます。しかし最大の謎はリリーが差し出す乳房。女を捨てて慈愛に満ちた母親になったというメタファーとして納得させようと思ってはみたものの、リリーが婆さんに乳房をふくませるシーンは二度と見たくない。

     
    ルイ・マル作品の中でも特に芸術性が高い映画で、理屈が通じない別世界があるかもしれないと感じている人にはお勧めの映画。頭のネジを回転してくれる不気味さを味わいながら、人間以外の生き物が生じさせる音に耳を傾けながら、そしてリリーが相手を選ばず乳房を与える意味(かなりこだわっています)は何なのかを想像しながら異様な世界の意外な美を体感してください。


    * 監督・脚本 ルイ・マル     * 1975年(仏・西独)作品

    * 出演 キャスリン・ハリソン   テレーズ・ギーゼ  

    ★ 夜空にあってもナイに等しいのがブラック・ムーン。

     

              YouTube - Black Moon - Talking Unicorn

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