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あなただけ今晩は

      

パリの娼婦街を舞台に演じるのは母国語を喋らない浮いたアメリカ人。その浮いている人達の中でさらに浮いているのがジャック・レモン扮する新米警官ネスター。警察に公認されていた娼婦街にブローニュの森から転属された生真面目な彼はカサノバ通りの家宅捜索を敢行。娼婦とともに豚箱にぶち込まれた客の中にはネスターの上司もいて、即日クビというのは国が違えど社会共通のルール。人間社会で何より重視されているのは黙認する(できる)目。黙認できなかったネスターは警察から弾き出され、ますます浮いた存在に・・

          
そんな彼の浮き方と肩を並べる浮き具合でカサノバ通りに立つのがグリーンタイツにグリーンリボンの娼婦イルマ。酒飲みペット(犬)も頭に付けているのはグリーンリボン。彼女は男に養ってもらうタイプの女性ではなく、反対に男(ヒモ)を養い食わしています。口から出まかせで涙を誘い客から金を巻き上げるのが上手なイルマは、その金を自分のために使わずヒモに貢いでいました。暴力的なイルマのヒモ男と真っ向から対立し、たまたま勝利してしまったのが行き場のなかったネスター。彼はいつの間にかイルマのヒモになりイルマに養ってもらう立場に・・ しかしネスターにとってヒモは居心地の悪い生活。そこでバーのマスターと協力して立てた計画がイルマの専属客を務める片目(左目だけで見る)紳士の設定でした。

               

妻との折り合いが悪い金持ち英国紳士に設定されたX卿を演じるためネスターは近くの市場で早朝労働に明け暮れる毎日で、イルマの相手をしたくても疲れて寝てしまうのが実情。そんな訳あり労働で得た金はX卿がイルマと過ごす一夜に充当され、イルマはX卿からもらった金をネスターに渡すという三人(実は二人)の循環システムが構成されていきます。しかしネスターの不自然な一人二役を演じる芝居は当然厳しい現実に直面。イルマの心はこの世に存在しない金持ち英国人に向かい始め、そこでX卿に腹を立てたのがネスター。果ては殺人計画を立ていつの間にか現実にX卿の殺人者にされてしまう不可解ネスター。

 
ビリー・ワイルダー監督の知的ユーモアと社会制度に対する皮肉が込められ、浮いたカップル間で金が行き来する映画。ある面では金に寄ってたかるウジムシ野郎が加わらないのでキレイな映画ともいえますが、社会が嫌う男たらしの娼婦が男に金を貢ぐ物語なので常識の範疇からすると大きく外れています。 “金は天下の回りもの”という言葉があるように、一人の人物のところに留まってはいけないのが金。その点、イルマは自分の巧妙な嘘で稼ぎ出した金をすぐに男に貢いでいたので金を回すことにかけては天下人? 彼女の執着は男で、一人ぼっちを極端に嫌っていました。そんなイルマをオモチャにせず、細工して彼女に返金していたのがネスター扮するX卿。


       

イルマにその事実を打ち明け、「愛してるのは君だけだ。他の男とは寝るな!」と抱き締めることができていれば、事態はこれほどまでに複雑化しなかったはず。実際ネスターがしたことはイルマをホッタラカシのまま早朝労働に明け暮れたことと自分が嫉妬するX卿を創り上げてしまったこと。嫉妬した老紳士を川で殺す際のネスターをたまたま現場で見ていたのがイルマの元ヒモ男。警察への通報で御用となり豚箱行きのネスター。こんなワケワカラン話を長々と続けることのスゴサと馬鹿馬鹿しさを感じながら、つい付き合わされてしまう多くのXを持ち合わせているワイルダー監督。

 
誰でも若い頃はカワイイを証明してくれたのが原題“Irma La Douce(かわいいイルマ)”を演じたシャーリー・マクレーン。おばさん時代のマクレーンしか知らなかったので、若いイルマのマクレーンはやはり若い。またジャック・レモンが使い分けた英国訛りの老紳士がネスターとイルマの結婚式に参加していました。その事実をウマク把握できず面食らっていたのが異国の老紳士Xを立案したバーのマスター。立案したことが現実に起こってしまう展開は“another story”ということで、軽快な音楽とともに馬鹿馬鹿しくてオモシロイ話は幕を閉じます。


* 監督 ビリー・ワイルダー    * 1963年(米)作品

* 出演 ジャック・レモン   シャーリー・マクレーン   ルー・ジャコビ


★  「男に働かせるのは恥!」と言っていたイルマの個性ある言葉が印象的。

   

         YouTube - Trailer - "Irma la Dulce" (1963)


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  • 2017.10.26 Thursday
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