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    目撃

    • 2011.05.23 Monday
    • 22:30
        

    人のスケッチを描くのがうまい主人公ルーサーは緻密に下調べをして静かに忍び込む泥棒の腕も持っていました。繊細な絵画表現ができる腕を持つということは緻密な計画を立て他人のモノを大胆に盗む腕にもつながる感じ。キチンと下調べをして忍び込んだ大富豪サリバン邸の寝室にあったのが厳重な電子機器で守られていた金庫室。
    サリバン夫妻が不在であることを確認していたルーサーは安心して盗みを完了するはずだったのに、途中でサリバン夫人がある男を連れて帰って来ます。たまたま金庫室に配置されていた椅子に座って寝室で戯れる二人を見ることになるルーサー

     
    過去に先妻を失くした大富豪サリバンは自分よりかなり若いクリスティを妻に迎えていました。セックスの面で妻を満足させられないサリバンはクリスティが他の男と寝るのを黙認する状態だったみたいで、金庫室に設置されていた椅子は妻と他の男とのセックス場面(マジック・ミラー)を見るためのもの。個人の性に対する性癖なので何とも言えませんが、父と娘ほど年が離れていたサリバン夫妻はこういうカタチで性の満足を得ていた様子が伺えます。そしてその椅子に座って目撃してしまったのが赤の他人で大泥棒のルーサー。
                    

    男と女の戯れはしだいにエスカレートし、男の暴力性に腹を立てた女は男にナイフで立ち向かいます。男の悲鳴と同時に銃弾の音が響き渡り、倒れたのはサリバンの妻クリスティ。彼女を撃ったのは大統領の警護をするシークレット・サービスに就く男。そして事件をもみ消したのが大統領補佐官グローリア・・ となると先の悲鳴の主は? そう!ジーン・ハックマンが扮した大統領(リッチモンド)本人。そのリッチモンドを大統領へと押し上げたのが大富豪サリバンで、二人(金と権力)は裏でつるんでいました。そんな経緯があったにもかかわらず女癖が悪い大統領はサリバンを裏切り、テレビで嘘泣き。権力者の実像ってこんなもん?

             
    原題は大統領が持つ絶対的権力を意味する“Absolute Power”。国外逃亡を企てていたルーサーはたまたまテレビで大統領の偽善を見てしまい、その瞬間に彼を包んだのがAbsolute Powerだったように思います。旧約聖書に書かれている言葉“目には目を”に従い、絶対的パワーに絶対的パワーで立ち向かったのが変装上手な大泥棒。
    特に一人娘ケイトの家に侵入して何も入っていない冷蔵庫に多くの食べ物を置いていく親心はサスガ世紀の大泥棒! 透明人間のようにアッチコッチに侵入できる彼は家族をほったらかしにしつつ、いつも家族のことを気にかけています。そんな大泥棒を敬愛していたのが刑事セスで、渋い男の娘は渋い男に心惹かれていました。

           

    捜査のためルーサーの隠れ家を訪問したセスとケイト。彼女は初めて見る父のプライベート・ルームに自分や母の隠し撮り写真が飾られているのに驚き、思わずこんな呟きが・・「部屋に戻ると父の来た気配がしていた。何かを見たり冷蔵庫の中身を心配したり、バカみたいだけれどいつも父がそばにいるみたいだった」 そんな彼女の気配は事実で、気配をキャッチできるのが親子関係なのかも。そしてその大事な娘に危害が加えられたことでルーサーのAbsolute Powerは更に激しさを増していきます。

     
    印象的なのは豪華なネックレスを大統領からプレゼントされたつもりのグローリアが大統領とダンスするシーン。ウォーターゲイト・ホテルというイワクありげな名前のホテルでダンスしながら密談する二人。そのネックレスはあの夜サリバン夫人が身に付けていたもので、送りつけたのは当然ルーサー。妻を愛していたサリバンにも事件当日の凶器を渡して準備万端の彼は自分の手を汚さずしてこの世からゴミを排除しています。イイトコロはすべて自分が持っていってしまうクリント・イーストウッドですが、悪に屈しない正義感がその映画作りを支えているように思います。

    * 監督 クリント・イーストウッド    1997年(米)作品

    * 出演 クリント・イーストウッド   ジーン・ハックマン   エド・ハリス

    ★ ラストに流れるイーストウッド作曲のピアノ曲(Kate’s Theme)がヨカッタ。

    ミスティック・リバー

    • 2009.09.08 Tuesday
    • 22:18
          

    冒頭で紹介されるのは家が密集した地区(近くに川が流れている)に暮らす三人の少年(ジミー・ショーン・デイブ)。ジミーの悪戯心がキッカケで警官を装った男に拉致監禁され性的暴行を加えられたデイブ。四日目にその隔離された場所から逃げ出すデイブですが、肉体の傷は完治しても心の深い傷はボロボロのまま25年という時は流れます。四半世紀という長くて短い“時”を乗せ、確実に一定方向に流れるのがミスティック・リバー?  大人の男によって引き起こされた少年の傷は癒えぬまま、無垢な少年は素直すぎる大人になっていました。

     
    かつての友達同士三人はそれぞれ結婚し家族にも恵まれ安定した日々が続くはずだったのに・・意外な形で疎遠になっていた三人を結びつける事件が発生します。
    一時期、闇の世界に身を置いていたジミーは娘ケイティのため足を洗い今では堅気の生活。その最愛の娘が殺されるという事態を引き受けなければいけなかったのが堅気とはいえ全く堅気らしくないジミー。彼は以前にある男(ただのレイ)を殺したことがあり、その男の息子(ブレンダン)がジミーの娘の恋人という立場にあるヤヤコシイ間柄。
                    

    殺した相手と関係を断ち切りたいジミーなのにジャスト・レイ(ただのレイ)の亡霊に追われるように娘が渦に巻き込まれてしまいます。そしてこの不可解な事件の捜査に当たったのが貧民地区から抜け出し刑事になっていたショーン。仕事柄ジミーの過去を知っていたショーンはこんな言葉を呟いていました。「神がお前の借りを取り返しに来た」意味深なショーンの言葉は何を表現しているのか。渦の中に巻き込まれた人間はどんなにもがいても逃げ切ることができず、ただ深みにはまっていくだけ?

     
    かつて闇世界に巻き込まれそうになっていたデイブは自力で脱出した経緯があったけれど、ジミーの娘ケイティは頭を棒で殴られたうえ拳銃で殺害されるというヒドイ事態に見舞われました。ケイティの出生がこれまた複雑で、ジミーの前妻の子がケイティ。そしてジミーの現在の妻アナベスはデイブの妻セレステと従姉妹同士のようで、
    かつての友人関係は微妙に続いていたということなのかな。登場人物がやたら多いので理解しにくいヨ〜。

    ジミーの後妻になったアナベスには二人の女の子がいて、デイブの妻になったセレステには一人の男の子。
    二組の夫婦はそれぞれ独立して家庭を築いているけれど奇妙に絡まるジミー家族とデイブ家族。そんな彼らとは離れたトコロにいたのがショーン。しかし彼もまた奥さんが家を飛び出し孤独の身。自分のもとに無言電話をかけてくる妻に呼びかけ、何とか修復を図ろうとしているのが現在のショーン。みんなそれぞれ問題を抱えながら毎日をこなしている様子が伺えます。


          

    幼い頃に性的虐待を受けたデイブは大人になってもその苦しみから逃れられず、時に悪夢のように吸血鬼と化してしまう自分をコントロールできないでいました。突如変貌する夫を理解できなくなった妻はケイティ殺しの犯人ではないかという疑念でイッパイになり、最終的に彼女の夫に対する疑念が災いしてデイブ一家は不幸のどん底に・・自分で招いた結果とはいえ、不幸な人はいつまでも不幸が続きそうで観ている側は胸が苦しくなってしまう。


    そしてデイブ一家を不幸のどん底に突き落としたのがケイティを失い冷静さを失っていたジミー。
    ケイティの仇を取るべく神経が高ぶっていたジミーはデイブにこんな言葉を投げかけていました。「お前がケイティを殺したんだろ? 正直に言うなら命だけは助けてやる。」 狼男のような表情になっていたデイブは事実に反して自分がヤッタと吐露。“青春の夢がなかった自分とは相反して輝く夢に燃えていたケイティを殺したのは自分だ”と夢を見ているように呟くデイブ。人の心の微妙さが巧みに表現されていたけれど、少年時代の傷を抱えたまま大人になってしまったデイブの最後は余りにあっけなさすぎる。

                
    悪夢のような現実から自分を取り戻したのがジミー。しかしデイブは悪夢を見たまま逝ってしまいます。人の運命を弄ぶかのようにコントロールしているのは神? 
    さらに残されたデイブの妻に追い打ちをかけるようにジミーの妻が発した言葉は以下のようなもの。「パパは愛する人のためだったら何でもする。それはいつも正しい。決して間違いはない。」 ケイティを殺してはいなかったデイブに向けて引き金を引いたジミーの罪はどうなるのか。夫を、そして父を失ったデイブの家族にお金を送りつけることで解決できる話ではありません。


    * 監督 クリント・イーストウッド    * 2003年(米)作品
    * 出演 ショーン・ペン   ティム・ロビンス   ケビン・ベーコン 


    ★ 罪のないデイブを洗い流すのがミスティック・リバー?

               YouTube - mystic river first teaser
     

    許されざる者

    • 2009.08.21 Friday
    • 22:29
           

    “ダーティーハリ−”に出演していた頃の若いクリント・イーストウッド映画は全く知らないけれど、映画監督(今では巨匠)として活躍するようになってからの作品は好き。特に“パーフェクト ワールド”や“スペース カウボーイ”がエスマルのお気に入り。でも馬に乗った男が拳銃をぶっ放す西部劇は大の苦手! でもクリント・イーストウッド監督・主演でアカデミー賞(作品賞・監督賞・助演男優賞・編集賞)にも輝いた哲学的タイトルの“許されざる者”は静かで味わい深い西部劇でした。
    特に撃ち合いシーンの途中に何度か挿入される絵に描いたような美しい荒野が印象深く残っています。

    オープニングで紹介されるのは主人公ウィリアム・マニーが持つ残忍な人となり。
    若い頃の彼は酒浸りで多くの女・子供を殺したらしい。にもかかわらず母の反対を押し切り彼の奥さんになったのがクローディアという女性。若くして天然痘で死んだ妻の影響で無法者だったマニーは土地を耕す農夫に転身していました。しかし二人の子を育てるにはやはりお金が必要。そんな環境に置かれていたマニーのもとにやって来たのが若い兄ちゃんの殺し屋スコフィールド・キッド。粋がってはいるもののマニーを前にするとまるでキッドで殺し体験がありそうにも思えない。

                   

    物語はジーン・ハックマン扮する保安官が統率していたある村で起こった娼婦切り刻み事件から始まります。この保安官の名前がリトル・ビル・ダゲットで彼が持つ残虐性と食い違うような少年をイメージしてしまうリトルが冠になっていますが、暴力で村の住人を支配しようとするダゲットの器は名前のように小さい。一方 娼婦の顔や体を切り刻んだのが牧場で家畜の世話をする牧童の荒くれ男。切り刻み事件を許せない娼婦たちは牧童を殺してくれれば懸賞金を払うという触書を出し、暴力的な男をこの世から排除するため自分たちが貯めたお金をその懸賞金に充てるつもりでいました。しかし村を仕切るリトル・ビルは馬と交換することで彼らがしたことを許そうとする馬好き保安官。自分の足で歩くより馬に乗る方がきっと好きなんだネ。


    そんな状況で懸賞金を狙って牧童殺しに挑むのが
    10年以上も前に殺しから足を洗っていたマニー。かつての仲間だったネッドを誘い若い兄ちゃんとマニーは三人で荒野に繰り出していくのですが、西部劇なので乗り物は馬。マニーを乗せるのをイヤがっていた白馬がおもしろい。馬とマニーがクルクル回転するシーンは久しく馬に乗ったことのない様子が示され、慎ましい農夫として穏やかな時間を過ごしていたと想像できるかつての殺し屋。他の二人は栗毛の馬なのにイーストウッドだけが白馬にまたがる王子様風で監督・出演を兼ねた強みがモノを言う世界。

         


    しかし血気盛んな頃とは違い多くの時間を人間らしく生きてきたマニーとネッドは若い頃のように残忍な殺しができず、
    ネッドはそんな自分を悟り故郷に戻ろうとしていました。そのネッドを捕まえ鞭打ち刑のように個人的感情で殺してしまったのがリトル・ビル。自分に逆らう奴はすべて敵とみなし容赦ない仕打ちで敵対する相手に向かう彼はマニーから見ると一番の極悪人。そういう理由もあり村の人たちは彼に従うしかない・・そんな中で立ち上がったグループが仲間を切り刻まれた娼婦たち。そして親友ネッドを殺され再び血が燃え上がったかつての極悪人マニー。


    原題は許されざる者あるいは許されざる行為を意味する『
    Unforgiven』。登場人物の男はすべてと言っていいぐらいの極悪人ですが、男を慰める仕事の娼婦たちはそんなに罪深いかな。お金がなくそれでも生きていかなければいけない状況で自分の肉体を商売にする考えは分からんでもない。しかし世間的には認められない職種なので罪深いことをしているのは確かなんだと思います。一方で経済的理由だけで好きでもない男と結婚する女に罪はない?(つべこべとウルサイッ!)

     
    では一番罪がない人物といえばクローディアなんじゃ・・この世にはもういないので罪を考える必要があるかどうかは分からないけれど、母の意見に逆らい無法者マニーと結婚した娘クローディアが母に対してしたことは罪が深いように感じます。でも彼女の影響で殺人から足を洗ったマニーにとっては天使のような存在がクローディア。
    立場立場で変化する複雑な人間関係で罪がない人はまずいない。自分で罪がないと信じている呑気な人は人間関係の把握ができていません。(ブファ!) とまあ偉そうなことを書いてしまったけれど『Unforgiven』からunが落ちるよう努力することが大切だと感じました。


    * 監督 クリント・イーストウッド   * 1992年(米)作品

    * 出演 クリント・イーストウッド ジーン・ハックマン モーガン・フリーマン


    ★ 初めて人を殺したキッドが酒を飲まずにいられなかった気持ちとそんな彼を静かに見守る父親のようなマニーは西部劇という枠を超えて感動を与えてくれました。

             YouTube - Favorite Scene in Unforgiven

    父親たちの星条旗

    • 2009.07.27 Monday
    • 22:24

      

    太平洋戦争で米国が攻め入った小笠原諸島(父島・母島)のまだ南方に位置する日本の領土・硫黄島が舞台になっています。島の名前と戦争は結び付いていたけれど、
    6人の米軍兵士が星条旗を硫黄島の摺鉢山テッペンに掲げようとしている写真のことは初めて知りました。こんなレベルで映画を観始めたものの、映画冒頭を占める銃弾のドンパチがうるさく途中で観るのをやめようかと思ったぐらい・・しかし何とか後半にたどり着けたのは監督がクリント・イーストウッドだったから。

    映画の核になっているこの写真を撮影(1945223日)したのは報道カメラマンのジョー・ローゼンタール。日米の激戦地となっていた硫黄島を米軍が陥落した印象の強いこの写真でアメリカ国民の士気を鼓舞しようとしたのが政治に関わっていた中枢部の面々。太平洋戦争で戦費を使い果たしたアメリカ経済を立て直すため、この写真を使って“国債を買ってくれ!”と国民に呼びかけます。その結果アメリカ国民のパワーは見事に結集し、疲弊していたアメリカ経済は活気を取り戻すという宣伝効果に用いられたのがこの写真。
                   

    しかし現実に戦場で戦い多くの血が流れるのをマノアタリにしていた写真の中の兵士たちは、現実とその後の世間が創り上げる茶番のギャップについていけず自分が体験した戦争に関して口を閉ざします。しかもこの写真が撮影された後、写真のメンバーの半数(3人)は戦死していました。少なくとも写真を撮影した段階で米軍が日本軍を制圧していたわけではないということが証明されます。残されている資料によると硫黄島で死んだ米軍兵士は日本軍兵士を上回り、アメリカの実質的損害が高まったのがこの硫黄島での戦いでした。

    原作は自分が直面した戦争に固く口を閉ざしたジョン・ブラッドリー(ドク)の息子ジェイムズ・ブラッドリー。撮影された写真の中の一人ドクは海軍の衛生兵として硫黄島の戦いに参加し、生き残り兵士としてその後の自分の立場や自分の母国の有様に苦悩した人物として描かれています。フラッシュを浴びる英雄的扱いの場面で何度も起こるフラッシュバック現象で自分の友人イギーを助けられなかった自分に苛立つドク。誰かを助けることができたなら英雄だけれど、星条旗を掲げただけの自分が英雄であるはずがないと悩むドクの心は清い。

    そんな彼の悩みを意に介さず着々とアメリカを運営する必要があるマスコミや政府は彼らの写真を利用して国債ツアーの行脚へ。戦争で資金がなければ答えは敗戦しかないことを理解していた国の管理者は勝利を得るため資金集めに奔走します。そんな環境に置かれた生き残り兵士の一人アイラ(インディアン)は英雄扱いに対応できず酒に溺れることで何とか生を繋ぎ止めていたみたい。彼も本来の自分と周囲が創り上げるヒーローとのギャップで悩んでいた一人・・社会の適応力は低いけれど彼の純粋な生き方は魅力的!

          

    前半はドクのフラッシュバックによる戦闘部分が占めていますが、後半では生き残ってしまった兵士のその後がジンワリ表現されていました。また同じ写真に写りながらその後死んでしまった兵士の遺族の心境も微妙で、息子を失った家族はこの写真が支えとなりその後の虚しい時間を生きてこれたというセリフが心に残っています。
    いろいろな立場に立つ人たちの心情を思うと一枚の写真が周囲に与えた影響はかなり大きい。そして自分たちの心とは乖離した状態でマスコミに祭り上げられ、それに従わざるを得なかったドクやアイラの心も複雑だったと思います。

          ♪僕は独り歩いて行く 本当のことを言うと孤独なんだ 
          でも孤独には耐えられる 君も孤独だと知っているから♪

    これは冒頭で流れた歌。その後の物語を象徴するように孤独な兵士たちが表現されていました。現実の戦争体験を通して真の孤独の意味を知るのか・・孤独な兵士たちは多くを語りません。ラスト映像は山から下った兵士たちが武器やヘルメットを砂浜に置き軍服も脱いで波間で戯れるシーン。“国のための戦いでも死ぬのは友のため、共に戦った男たちのためだ”と語るのは回想場面でのドク。命を懸けて戦い多くの友人を失った戦友同士にしか分からない強い絆でつながっている彼らは、互いの孤独を知っていたからこそ自分の孤独を支えることができたように思います。

    * 監督 クリント・イーストウッド    * 2006年(米)作品
    * 出演 ライアン・フィリップ   ジェシー・ブラッドフォード

    ★ 音楽にも造詣が深いクリント・イーストウッドはこの映画で監督のみならず作曲も手掛けました。
             YouTube - Flags of Our Fathers (Music Sample)

    スペース カウボーイ

    • 2009.07.21 Tuesday
    • 22:18

          

    宇宙への憧れを抱き続けて40年、やっと宇宙に飛び出せるその時を迎えたのが1958年当時 宇宙探検を目的に結成されたチーム・ダイダロスの若者4人。40年前に宇宙に飛び出すつもりだったセピア色の彼らの夢を奪ったのは一匹の猿で、それ以降4人は宇宙から離れた地上生活を余儀なくされていました。そして40年経った今、宇宙飛行士として再び脚光を浴びたのが老齢に達してはいたものの青年の心を持ち続けた4人のオヤジ。

    腕に刺青をした牧師タンクと相変わらずの女たらし要素を発揮するジェリー、そして無謀な曲芸飛行を得意としていたホークといつも対立していたフランクがチーム・ダイダロスのメンバーでした。イーストウッドが演じたフランクに突如NASAから二人の訪問者が駆けつけます。緊急事態が宇宙で発生し、その事態に対応できるのはフランクしかいないという切羽詰まった状況。何か裏事情がありそうなNASAに疑念を抱きながらも見事に復活する危険な老オヤジたち。

                   

    米ソ冷戦時代の遺物として宇宙を遊泳していたのがロシアの人工衛星アイコン。永遠に宇宙を旋回するはずだったロシアの人工衛星が突如制御不能に陥り、何故か求められたのがドクターフランク。彼は宇宙パイロットであると同時に人工衛星の心臓部となるエンジンの設計者でもありました。フランクが設計した人工衛星スカイラブのエンジンと同じエンジンがロシアの人工衛星にも搭載されていたようで、そのエンジンを制御できるのは設計者フランクだけしかいないという判断を下したのがNASAの高官に出世していたガーソン。

    裏でロシアと手を組んでいる不可解な様子のガーソンは宇宙開発を仕切るトップ。かつて猿を起用したのもこのガーソンで、チーム・ダイダロスにとっての忌まわしい過去はガーソンによるものでした。因縁対決のようなフランクとガーソンですが、宇宙への夢は誰にも負けない老オヤジたちの執念で40年ぶりに晴れて宇宙に飛び出したガーソンに抑え込まれていた男4人。そこで彼らが見たものは4つの核を搭載した怒りに燃えるロシアの人工衛星。意志を持っているかのようなロシアの人工衛星は完全武装してフランクたちに向き合います。

          

    その危険性を察知したフランクは地球に持ち帰るよう命令されていた若い飛行士イーサンに警告するのですが、イーサンはフランクの言葉を無視して上司の命令に従い命を落とします。もう一人同乗していた若いパイロットも完全武装した人工衛星の反応に脳シントウを起こしてダウン。そんな状況で活躍する年季が入ったダイダロスメンバーの優秀さと勇気がメイッパイ表現されていました。長年の経験と知力がモノを言う事実に屈しざるを得なかったのがコンピュータ頭脳に頼り過ぎていた現代の若者。
    このことをNASAに示すことになったのが核を搭載した制御不能のロシア製人工衛星(でも心臓部は米国製?)。

    ラストは地球に帰還するボロボロになったスペース・シャトル。核を積んだ人工衛星と共に月を目指したのが癌に犯されていたホーク。彼の夢だった月にワンの合図でボタンを押したのがホークと喧嘩しながら親友関係に至ったフランク。自分が犠牲(本人はそのようには思っていないと思う)になり地球を助けたのが無謀な音速飛行を好んだホーク。 地球に帰還するシャトルのハンドルを握るのは親友ホークを失ったドクターフランク。

    翼がもぎ取られた高速の落ちるシャトルが落ちないで着陸できたのはかつての無謀なホークのおかげ。彼が手動で対応した速度を落とす時の方法をそのままソックリ真似ていたのがフランク。ホークの魂がフランクに乗り移ったかのように一体化した二人の作業で、無理だと思われていたシャトルは地球に戻ってきました。何もかもモギ取られボロボロになったシャトルの帰還は頭脳明晰なコンピュータではなく過去の体験による人間の手により不可能を可能にすることができました。

    * 監督 クリント・イーストウッド     * 2000年(米)作品
    * 出演 クリント・イーストウッド   トミー・リー・ジョーンズ 

    ★ 何度か出てくる余裕がない“ワンの合図”とエンディングのフランク・シナトラの♪Fly Me To The Moon♪が印象深い!

       YouTube - Bellagio Fountains - Frank Sinatra Fly Me To The Moon 

    パーフェクト ワールド

    • 2009.07.15 Wednesday
    • 22:14
      

    この映画の主人公は強盗“ブッチ”。ブッチで強盗といえば“明日に向かって撃て”のポール・ニューマンが演じた西部史に名が残る実在した銀行強盗ブッチを思い出します。今回のブッチは自分を捨てた父親との確執を抱え込んだまま成長した頭脳犯罪者ブッチで、父親を憎みながら愛し続ける屈折した性格の持ち主ブッチをケヴィン・コスナー演じました。紙一重で表裏一体化している愛憎によって支えられてきたブッチは世間一般の幸せより何かを目指しているような・・

     
    そんな彼とたまたま同じ車に乗り合わせ、アラスカ行きのブッチと旅をすることになったのが8歳の少年フィリップ。人質として連れ去られたフィリップは父親が家出した家庭で育てられ、お化けのコスチュームを着て家々を回るハロウィンには参加させてもらえないエホバの証人グープでした。そんな堅苦しい環境に置かれていたフィリップを解き放とうとしたのが犯罪者ブッチ。初めはビクビクしていたフィリップだったけれど、ブッチの導きで女性的少年から根源にあった男を取り戻していきます。

                   

    幼少期に父の暴力を体験した苦い記憶のせいかブッチの精神がブッチギレル瞬間をしつこく描いていたイーストウッド監督。特に後半に出てくる黒人の家で自分の言うことを聞かない息子を殴る父親に対するキレ方は半端じゃなかった。そんな一部始終を目にしたバズ(ブッチが名付けたフィリップの呼び名)は慕っていたブッチを狙って撃ちます。それまではブッチの言うことに素直に従っていたバズだったけれど、彼の我慢の限界を超えたブッチの言動に耐えられなくなったバズの切なそうな表情は心に沁みる。ブッチによって鍛えられたバズから本来のフィリップを取り戻した瞬間だったと思います。

     
    舞台は賄賂で政治や治安がコントロールされていた1968年テキサス州。そんな場所を嫌い脱獄したブッチは大自然と人間が闘うアラスカを目指します。自分を捨てた父がアラスカから自分に宛てた絵ハガキを大事そうに持ち歩いていたブッチ。自分に暴力を振るう父をトコトン憎みながら、そんな父が暮らすアラスカに行こうとしたブッチの心はどうも複雑。相反する気持ちが同居しているブッチは魅力的ではあっても社会的には誰からも理解されないロンリーオンリーワン。


         

    そんなブッチの少年時代に関わっていたのがイーストウッド扮するテキサス州警察署長レッド・ガーネットという宝石のような名前の追っ手。ブッチを追いかけるレッドは暴力的な父親から離すため長期間の少年院送りになるよう証言台に立ったことがある人物。奇妙な親子関係は誰にも理解できず、ブッチは暴力的な父親を慕っていた様子が伺えます。しかし彼の車に同乗していたフィリップは暴力的なブッチに好感が持てず、思い余ってブッチを撃つ少年でした。

          
    題名の“パーフェクトワールド”の意味するところは何なのか。描かれている内容は強盗・殺人が繰り返されるこの世でどう考えてもパーフェクトとは呼べない。そんな状況で生きていかなければいけない不条理な人間社会は悪と呼ばれるものや善と呼ばれるものが入り混じって混沌としています。ブッチがしたことも悪の部分と同時にフィリップに与えた影響も大きかったし、ブッチの父親も暴力的だったにもかかわらず息子ブッチに慕われるという奇妙な現象が描かれていました。

      
    ラストは何回観ても泣けます。一日に二回も撃たれたと言うブッチは自分のパーフェクトワールドにたどり着けたのか。静かなオープニングシーンから始まるブッチの穏やかな寝顔とキャスパーの面が草原で仲良く並ぶツーショット。その周囲に散乱する紙幣・・心地良さそうに眠っている雰囲気のブッチは死んでいます。その安心したような表情から伝わってきたのがエスマルにとってのパーフェクトワールドでした。


    * 監督 クリント・イーストウッド   * 1993年(米)作品

    * 出演 ケヴィン・コスナー   クリント・イーストウッド


    ★ 撃たれるなら知らない奴より知ってるフィリップで良かったと言っていたブッチは最後の時間を息子のような少年と過ごすことができました。

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