フラッシュダンス

         

エイドリアン・ライン監督の“運命の女(2002)”を観て以来、この監督を意識するようになったエスマル。“ナイン・ハーフ”や“危険な情事”のセックス映像とは異なる夫婦の哀切さを表現した“運命の女”は監督61歳の時の作品。そして音楽(ホワット・ア・フィーリングやマニアック)が爆発的にヒットした1983年、監督42歳の時の初期映画(二作目)がコレ。監督が得意とするセクシーな映像美は当時からのもののようで、映画を観るというより音楽を観るという印象が強い。

特にフラッシュ・ライトを浴びてバーの小さな舞台で踊る主人公アレックスのダンスは魅了されると同時に、男をその気にさせるフェロモンに溢れています。舞台でバサ〜ッと水を浴びる彼女は多分アレックスを演じたジェニファー・ビールスではないと思うんだけれど・・まあ誰でもいいんですが女はセクシーさを武器に生きていくことが大切かなと感じた映画。女性のセクシーさをすべて抹殺する社会なら味気ない社会になってしまう。
              

プロのダンサーになる夢を抱きながら昼は鉄工所で溶接作業をしているのがアレックス。職種的にはかなり男っぽい仕事に就いている彼女はブチャーク(マズイ顔立ちの憎みきれないロクデナシ風)な犬と一緒に倉庫のような場所で暮らしています。経済的には満たされていないけれど将来の夢につながる道が彼女には見えていました。
だから昼間の大変な仕事で疲れて帰宅してもダンスの練習をすることはむしろ彼女にとっては息抜きのようで、溶接作業で火が飛び散るように彼女の情熱的な心の火はダンスに託され表現されていました。

そんな彼女に心惹かれ始めたのが鉄工所の社長ニック。離婚歴がある彼が彼女をデートに誘っても「上司とはデートしない」と拒否。しばらくは相手にされていなかったニックですが、ホントは彼女も上司ニックのことが好きだったみたい。離婚した奥さんと連れ立ち車に乗る現場を覗き見てしまったアレックスは、その日彼の家の窓ガラスを割ります。感情を激しく相手にぶつけてしまうのがアレックスの特性といえそうで、その激しい情熱と躍動する肉体が彼女のダンスを高めていました。

         

ダンス教室に通ったことのないアレックスのダンスは自分の感情表現の場であったように感じます。感情を押し殺して生きていくことは死んだも同然。プロダンサー養成所のオーディションに憶病になり逃げていたアッレクスにニックが言いました。
「夢を捨てることは死ぬことと同じ!」彼の言葉に励まされ自分の夢に向かって歩き始めたアレックス。彼女のほとばしる情熱が託された最後のダンスは夢を捨てなかった彼女とその夢を支えたニックの共同作品。

ダンスを終え晴れ晴れした彼女を待っていたのが赤いバラの花束を抱えたニックと赤いリボンを首に巻いた愛犬グラント。“人生を信じてステップを踏めば世界は私のもの”という歌の通り夢を信じたアッレクスはその後どんなステップを踏み始めるのか・・どうでもいいことだとは思うんだけれど“危険な情事”の主人公(愛人)もアレックスという名前でした。エイドリアン監督はアレックスという名前に惚れてる?

* 監督 エイドリアン・ライン     * 
1983年(米)作品
* 出演 ジェニファー・ビールス    マイケル・ヌーリー

★ アレックスが仕事場やオーディション会場などに行く時の移動手段は燃費がかからない自転車でした。  
      
         
YouTube - Flashdance OST - She Is A Maniac


運命の女

          

ニューヨーク郊外の湖畔に家を構え穏やかな暮らしをしていたサマー夫婦の表裏一体化した愛憎を描いた映画。オープニングはどこにでもある家族の朝の風景で、小学生の息子と小さな会社を経営する夫エドワードを送り出すのが専業主婦コニーの仕事。
その日の朝は強風だったにもかかわらず彼らを送り出した後、彼女は電車に乗りニューヨークにお買い物。歩くのも困難なぐらいにすべてを舞い上がらせてしまう強風の中、路上でぶつかり転倒してしまったのがコニーとフランス人ポール。タクシーを捕まえ何とか帰ろうとするコニー・・しかしその日のタクシーは止まってくれませんでした。いろいろな要素が加わり事故のようなカタチで遭遇した二人は激しい肉体の快楽におぼれていきます。

セクシー映像(ナインハーフ・危険な情事・幸福の条件など)で定評があるエイドリアン・ライン監督の意図する方向にズルズル引き込まれていくコニーとポール。二人の間にはセックスしかないのではないかと思わせるぐらい(事実そうだったかも)妖しく燃える二人は冷静さを失いもうどうにも止まらない。知らず知らずにポールが住むソーホーのアパートメントに行ってしまうコニーは夫を裏切るという感情より自分の肉体を自分の意志でコントロールできないぐらいに熱くなってしまったように感じます。燃えさせたのはフランス人ポール、そして燃えたコニーは燃え尽きて灰になるのを待つしかないような雰囲気。
              

妖艶な女体を強調させるコニーの変化に早くから気付いていたのが優しすぎるエドワード。何かがあると知りながら目を背けたいような・・でも背けられない彼の心理が痛ましいまでに映し出され、夫を裏切っている妻の背信(原題unfaithful)行為はやはり許せない! 危険な不倫行為を何とか断ち切ろうとするコニーと、一方でポールが別の女の子と仲良くしている現場を見て嫉妬に狂うコニーがいてどうにも始末が悪い。男の肉体に狂った女は鬼に変身する可能性があるので女は変な男にひっかからないようにしないといけません。

 
エドワードを愛しているのに適当な口実を設けてポールに抱かれに行くコニーの心境は魔が差したとしかいえない感じ。女の扱いが上手いフランス人ポールもコニーをレイプした訳でないのでどちらがどうということも言えないのですが、強風が吹き荒れ日にわざわざ買い物に出かけたコニーのタイミングの悪さがその後の思いがけない事件を招くことになります。その思いがけない事件というのが夫の手による妻の愛人殺害。初めから殺すつもりは全くなかったようで、引き金になったのが夫から妻にプレゼントされたスノーの置物型オルゴール。その置物をポールの部屋で目にしたエドワードはその直後気分が悪くなり、気が付いた時にはそれでポールの頭を殴り殺していました。

        

ストーリーを書くと泥沼化した三角関係のように感じてしまいそうですが、
エドワードの妻に対する繊細な愛情が明らかにされる切ないシーンへとつながっていきます。
それにしても夫からプレゼントされたものをよく知らない男にプレゼントする妻の無神経さはいかがなものか! そしてある日その置物が自宅に戻っていることに気が付き、その中に隠されていたエドワードのメッセージを知ることになるコニー。
家族三人の写真の裏に記されていた“君は僕の生きる糧”という言葉通り、精一杯妻を愛していたエドワードの心境を思うとコニーがしたことは許されてはいけないのかもしれない。

 
ポールに何をしたのかと迫るコニーにぶつけたエドワードの言葉にこんなのがありました。「僕は君を知ってる。君が憎い! 殺したかったのはあいつじゃなく君だ!」
今までずっと押し殺してきたエドワードの感情を爆発させたのが皮肉にも最愛の妻コニー。彼女への愛情が深ければ深いほど憎しみもその深さに比例して増すのだということを思い知らされる緊迫したシーン。純粋さにおいては女より男のほうが上かも。
そんな純粋な旦那を演じたリチャード・ギアが好き!

 
誰にも言えない秘密を抱えた二人は何とか毎日を生きていこうとしていました。しかしそんな時間が続くことはなく二人の夢が最後に語られます。事実に向き合い覚悟した二人の間に交された話はすべてを売り払いメキシコへの逃避行。ビーチの小さな家で名前も変え毎日魚釣りとギターの練習をして暮らすのが彼らの夢。現実にそんな日が訪れるかどうか・・こうして二人は警察署の前で夜が明けるのを待っていました。
嵐の前の静けさより嵐のあとの静けさがきっとホンモノ。


* 監督 エイドリアン・ライン   * 2002年 作品

* 出演 リチャード・ギア  ダイアン・レイン  オリヴィエ・マルティネス


★ エドワード(夫)にこれほど愛されているコニー(妻)は幸せだっ!

         YouTube - Unfaithful - Movie Trailer
       


危険な情事

          

邦題だけのイメージでこの映画を観ると不倫映画としての印象が強く残りそうですが、原題は命取りになる可能性がある吸引というような意味の“Fatal attraction”で魔が差す不倫関係から生きるか死ぬかの切羽詰まった状態にまで高まっていく危険な映画。情事が危険なのではなく情事を介して感情が高まっていく男女の心理が危険だと感じました。

 

男(ダン)にとっては軽い浮気のつもりのセックスが女(アレックス)にとっては重大な出来事だったようで、女の感情はドンドン重さを増していきます。抱くだけ抱いて我が家に帰ろうとするダンにしがみつき涙を見せていたアレックスは独り身のキャリア・ウーマン。あるパーティ会場で彼女の目線につい惹かれ、結果として肉体関係を持ってしまった弁護士ダン。一晩の遊びで決着をつけたいダンと本気の狂気で彼を求め自分のそばにつなぎ止めようとするアッレクス。男と女の根本的ズレはその後に起こる事件の引き金となり不倫映画から恐怖映画に変わります。


                

観る視点により意見は異なると思いますが、初めから遊びのつもりで女を抱く男の精神は許せん! しかし女の方も初めから彼に妻子がいることを知っていたので、妻子ある男を好きになった自分の立場を認識しなければいけないとも思うけれど女に火を点けたダンが断然悪い。彼の家庭を崩壊させてでも彼を手に入れようとするアレックスの言動はエスカレートし、そんな彼女にますます激しい怒りをぶつけるダン。互いに何も知らない二人のセックスも激しかったけれど、濃密関係にある二人の爆発する怒りも激しかった。

 
ところで“アッレクス”という名は男の名前だと思っていたけれど、女性名にもなるのですね。狂気のアッレクスで思い出すのがキューブリック監督の“時計じかけのオレンジ”の主人公アレックス。本能のまま暴力やレイプで人を傷付けても平気でいられる男の名前がアッレクスでした。この映画のアレックスは女性ですが、本能で動くという面で考えると共通するものが見い出せそうな名前。男にも女にもなれる本能むき出しのアッレクスの正体は?


       

集中できる物語の展開はラストに向けて一気に緊張が高まります。恐怖を演出するのは何といってもバスルーム。湯気が立ち上りバスタブの湯が溢れ出しているそんな空間で何も起こらないワケがない。そこに突如不自然に出現するのがアッレクス。現実的なアレックスが厳重に鍵をかけた部屋に侵入できるはずはない。となるとバスルームでナイフを持ち自分のフトモモを傷付けながらダンの奥さんにブツブツ言っているアッレクスは何者なのか。

 
狂気のアッレクスをバスタブに沈め息の根を止めたかに見えたのがダン。しかし又しても不自然に蘇るアッレクス・・日本神話にもこのようなタイプが登場していました。殺されても殺されても死なずに再生する生き物・・ジャ〜ン!ネチネチの八岐大蛇。そして再生したアレックスの胸をぶち抜いたのがダンの妻。三角関係にピリオドを打つには中途半端な状態ではすぐにぶり返すということカナ。妊娠していたアッレクスの狂気は妊娠させた張本人ダンの妻の手によって見事に破壊されました。


* 監督 エイドリアン・ライン    * 1987年 作品

* 出演 マイケル・ダグラス   グレン・クロース   アン・アーチャー


★ 娘が飼っていたウサギを鍋でゴトゴト煮ていた犯人もやはりアレックス。

          YouTube - Fatal Attraction Trailer


幸福の条件

          

「金で買えないものはない」と言い切るジョン・ゲイジはラスベガスでは有名な大金持ちの紳士。彼は自分の言葉を否定した女性ダイアナに提案したのは、100万ドルを支払うことを条件に一晩ダイアナと過ごすこと。彼女は人妻でお金に困っていました。初めは拒否したダイアナと旦那のデイヴィッドですが、結果としてジョン・ゲイジの申し入れを受け入れることに・・

         

“愛は金で買える!”というテーマに挑んだジョン・ゲイジと互いの愛を求める夫婦の三角関係の映画。その日のことは口にしないという約束でダイアナは一晩100万ドルでゲイジの女になりました。200万ドルでもいけると判断したのはデイヴィッドの友人だった弁護士ですが、問題はデイヴィッドがお金のためにゲイジの申し入れを受け入れたこと。そしてその夜を境に夫婦の溝が深まり、デイヴィッドは妻の言葉を素直に信じることができなくなります。


お金が必要だったデイヴィッドとダイアナの愛は金に屈した? 
見方を変えると金で愛が買えるかどうかはハッキリしないけれど、愛は金で崩れることがこの映画で証明されました。そんな“金vs愛”の証明に何故か情熱を燃やすのがジョン・ゲイジ役のロバート・レッドフォード。愛を重視する夫婦の間に割って入るイヤな男の真実は?


                       

デイヴィッドとダイアナは学生時代に出会い、そのまま結婚。喧嘩しながらも順調な生活が続くと信じていた二人は社会的不況の影響で新居を手放さなければいけない事態に直面し、次に二人が選択した道が一か八かのギャンブル。“人生は賭け”と考えるデイヴィドはダイアナと駆け落ち・・そして経済的打開策も賭け! その賭博場で二人に声をかけたゲイジもギャンブルでお金を増やしたのか、三人ともが一か八を好む反コツコツタイプ。

デイヴィッドとダイアナの信頼関係は絶対的なものだったはずなのに、ゲイジの出現で二人の絆は大きく揺らぎます。しかしお金に執着せず100万ドルで思い出のカバを買ったデイヴィッドのバカさ加減が功を奏し、ダイアナのゲイジに傾いていた心は再び揺らぎ始めます。一番調子いいのはダイアナで、彼女に振り回されているのが二人の男なのかも。    
         

冒頭で愛を語るダイアナの言葉が妙に引っ掛かりました。『“心から愛する人は一度手放せ”という 戻ってきたら永遠に自分のもの』 人は誰かのものであるはずはないんだけれど親や配偶者あるいは恋人などに対して自分だけを愛してほしい、自分だけを見つめてほしいという独占的な気持ちがあるように思います。しかし独占と支配は紙一重・・大切な人を手放すことで本心が試される二人に愛は存在するのか?


余談ですが、チャイナ服を着ていたデミ・ムーアに関して一言。
全然似合ってな〜い! やはりチャイナ服は東洋系の顔立ちでなければいけないと確信しました。

原題は“Indecent Proposal(下品なあるいは無作法な申し入れ)”となり、幸福の条件と如何にして結び付くのかを考えてみました。

 

敢えて結び付けるとキレイゴトで幸福は手にすることはできない? 幸福の条件は下品な申し入れの克服ができるかどうか? もし克服できれば(一度手放した相手が戻ってくる)二人の愛は永遠になる? 愛は当事者本人の間に成立するものではなく、愛し合う二人の間に誰かが介入して心の奥を試された時に見えてくるのがその人の愛であるように感じました。

* 監督 エイドリアン・ライン    * 1993年 作品

* 出演 ロバート・レッドフォード   デミ・ムーア   ウディ・ハレルソン 


★  裏のないコインを持っていたゲイジの心も裏がなかった? 
      

YouTube - proposta indecente


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