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- 2022.04.05 Tuesday
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互いに好きな相手と結婚し,その二人が結婚当初の初々しい気持ちを維持しつつ老後を迎えることは奇跡のようなもの。多少(ほとんど?)の打算を含む長い結婚生活を維持するには夫婦の忍耐が必要で、愛情というやっかいなものはなくていい。むしろ結婚生活に不必要な要素が愛情で、愛情があればあるほど喧嘩の回数も増えるように思います。この映画の主人公ベンとケイティーは豊かな愛情を持っていたがゆえに15年目の倦怠期を迎えていました。切った瞬間でナスが変色するように過ぎ去るだけの時間に翻弄されてしまうのが愛情。愛情の最大の敵は永遠に刻み続ける時間?
ベン&ケイティー夫婦だけではなく、すべての夫婦すべての愛し合う男女が創り上げる私たちのオリジナル・ストーリーという意味が映画の題名に託されているように思います。その一例としてあるのが回想しながら綴られる過去の出会いからプロポーズそして子育てを経て心が離れてしまった夫婦。二人になれば言葉と言葉が激しくぶつかり合い、子供がいれば仲よしパマ(パパ&ママ)を演じるのがベンとケイティー。場面に応じて器用に演じ分けるという点で二人は息が合っています。
しかし口喧嘩が絶えない二人が選択した道は別居生活。普通はこの段階で経済的につまずく(旦那が出ていけ!と怒鳴る)のが妻ですが、二人の場合は夫が家出。
新たな住まいを即座に確保することができるベンは経済力がある。その後、別居した二人は用もないのに相手に電話をかけることで共通する似た者同士。売り言葉がケイティーなら必ずその売り言葉を買ってしまうのがベン。売り買いが交錯する経済市場のような激しさでトコトンぶつかり合うのがこの二人。仲がいいのか悪いのか・・
いずれにしても体力のある二人。
陰陽で交り合うのが夫婦とするなら、陰陰では反発ばかり。
ケイティーの女友達が表現したのが“ロマンスの抹殺装置が結婚”。仕事・家事そして育児にも追われるようになると二人の間にロマンスがあろうがなかろうがそんなことはどうでもよく、大切なのは今泣いている赤ん坊の世話と今日食べるものがあるかどうか。妻の愛情を求めない代わりに毎日の掃除・洗濯・食事を求めるのが夫?
ロマンスを抹殺しないと結婚生活は前に進まないという情けない現実にぶつかります。しかし意外にもベンは過去のロマンスを大切にする男で、現実的にならざるを得ないケイティーに甘える子供のような夫でした。
* 監督 ロブ・ライナー * 1999年(米)作品
* 出演 ブルース・ウィルス ミシェル・ファイファー
★ ベン&ケイティーが選んだアスの物語は他人が認める社会的夫婦より互いの親密さで形成される友人関係でした。
YouTube - eric clapton - I get lost (acoustic)
希少価値の高さで有名になった高価なコーヒー(コピ・ルアク)を愛飲しているのはジャック・ニコルソン扮する大金持ちのエドワード。若い頃の夢を押し殺し家族中心に生きてきたのがモーガン・フリーマン扮するクイズマニアで自動車整備を仕事に選んだカーター。人生の半ばを過ぎ、さらに還暦も過ぎた二人の男(白人&黒人)の共通点は癌に侵され残り6ヶ月の命しかないということ。そんな二人がガン病棟で出会い憎まれ口をたたきながら互いに影響を与え合いサイコーの友人関係を築いていく映画。死に直面した二人のジイチャンが少年のようにはしゃぐ姿は現実離れしているけれど、金にモノを言わせ冒険の旅に出ようとする姿勢はジメジメした死から脱出する明るいパワーが感じられました。
原題『The Bucket List』の意味するところは自分の人生でやり残したコトを書き出しクリアしていくリストのことで、水を汲むバケツ(bucket)のように自分の内部に溜めていた水分を取り除くことが表現されているように感じます。喜びの表情で迎えられる生と悲しみの表情で送られる死は一つのもの。喜びと笑いでスタートするのが生なら死もその延長にあっていいはず。生の長さが重要なのではなく生の中身が大切なんじゃないのかな。喜びと笑いでこの世を去った身勝手ペアのジイチャンたちは幸せだけれど、カーター家族の心情は複雑かも。
一方 仕事中心の生活で獲得した大金持ちエドワードを気にかけているのは仕事上の秘書トーマスだけ。着々と仕事をこなすトーマスは病気になったエドワードの世話をするのも秘書としての務めということで、ドライ関係のエドワードとトーマス。しかし家族として強い絆を求めるカーターの妻は夫が冒険の旅に出ることを快く思っていません。そんな妻に押し殺していた今までの感情を爆発させ、残り時間を使ってヤリタイコト・リストをクリアしようとしたのがカーター。お金がなければできないことばかりの無謀な冒険はエドワードの経済力で達成されます。最高(?)の人生の見つけ方の必須条件は金持ちでその大金を使うことができる人に出会うこと!
冒頭 ヒマラヤの雪山シーンで友人エドワードのことを語っているのが先に死んだカーター。“彼がその目を永遠に閉じた時、心は開かれた”とエドワードのことを語るカーターは神の目を通して友人を見ているような感じ。先に死んだカーターが眠るヒマラヤにエドワードの遺灰を持参したのが彼の忠実なる秘書トーマス。語り部役で物語をリードするカーターがエドワードに初めて出会ったのがガン病棟。エドワードが経営していた病院でたまたま同室になったカーターに対してエドワードが言った言葉は「半分死んでる。」
半分死んだようなカーターを生き返らせたのがコピ・ルアクの希少な香りを愛していたエドワード。ヤンチャ少年のまま成長し、仕事に没頭して大金持ちになったような雰囲気のエドワードは言いたい放題でやりたい放題。自分を心配してくれる家族もいない彼は孤独な一匹狼ですが、カーターの方は妻や子供・孫に囲まれた優しい物知りジイチャン。今まで置かれていた環境がまるで正反対の二人は余命6ヶ月と診断されたことが縁で生涯の友達になりました。身近な死を(ガンでなくても将来の死はみんな一緒)共有する正反対の二人が罵り合いながら友達になっていく過程がユニーク。
互いにないモノを補い合うように影響を与え影響を受ける友人関係は、仲良しゴッコにはない深い絆が生まれるように思います。
死体安置所のような部屋にはいられないと言っていたエドワードが変化していくサマは子供っぽくてカワイイ。信仰心のないエドワードが教会の壇上で語るカーターの思い出話の後、見ず知らずの人に親切にするという項目にチェックする場面は笑いながら泣いていました。天国ナンテ信じるタイプじゃなかったエドワードが壇上で語る言葉の中に天国が何度か出てくるし、カーターがリストアップした最後に残った一番目の項目(荘厳な景色を見る)をチェックしたのが仕事熱心なトーマス。カーターが提案したThe Bucket Listの残りを完成させたのがエドワードと彼の秘書トーマス。
余命6ヶ月を宣告された二人のジイチャンの友情が描かれていますが、納得できないのはカーター家族のはず。何の因果かエドワードと二人、雪山に眠ることになった彼の妻や子供たちはどんな気持ちでその事実に向き合えばいいのか。先に死んだ二人は荘厳な景色を前に雪山のテッペンで憎まれ口をたたき合いながら楽しんでいるのかも。終わって初めて見えてきたのが二人の身勝手さ。共通点がないように見えていた二人は身勝手という点でピッタリ合っていました。
先に逝ったカーターの遺灰がチョコ・フル・オブ・ナッツのインスタント・コーヒー缶に入っているのは納得できるけれど、後から逝ったコーヒー通エドワードの遺灰も同じインスタント缶に入れられていたのは何故? 希少価値の高いコピ・ルアク缶ではなくインスタント缶に入れられたエドワードは死んでカーターに近付いたってことカナ。同じインスタント・コーヒー缶に入れられ、同じ場所で眠る二人の黒白コンビは怪しい関係を雪山に残すことに成功したように思います。
* 監督 ロブ・ライナー * 2007年(米)作品
* 出演 ジャック・ニコルソン モーガン・フリーマン
★ 余命が明確になる前にリストを作成し、体力があるうちにチャレンジする気持ちにさせてくれた映画。