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- 2022.04.05 Tuesday
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実体がないので手で触れて確認することができないのが “愛” と呼ばれているものの正体。 自分で愛だと信じてその愛の対象者に接しても、相手にとって迷惑に思われる場合も無きにしも非ず! 他人なら尚更のこと・・ 家族同士でも親が愛情だと思って子供に接する感情も時に子供には負担になることも少なくありません。 ペットのように可愛がったり世話を焼くことが愛であるはずもなく、子供に期待を寄せる親のエゴなどは愛と対極に位置する感覚だと思います。
多くのものが画面いっぱいに配置されている有名なこの絵のタイトルは 『愛のアレゴリー(寓意)』。 寓意(表現されたものを読み取る)というのは観る人によってサマザマなので、絶対コレ!と定義付けすることはできません。 しかし絵を観た人が何を感じるかで自分が愛をどのように捉えているかの判断にはなると思います。 作者は16世紀のイタリアで活躍した通称 “ブロンズィーノ” で本名はアーニョロ・トーリ。 何となくブロンズをイメージして名付けたような名前です。
エスマルがこの絵から受けた印象は、心地よさではなく不気味さ。 愛は心地いいものではなく不気味なものなのか。 一番不気味なのはヴィーナスの背後で首が浮いたようになっている女の子。 よく観察すると左右の手首がサカサマで下半身がどうなっているのか分からない。 キューピッドの背後にいる人物も頭を抱えてわめいている風で、観た感じは悪い。 ブルーの布でヴィーナスとキューピッドを覆うようにしている白髭のおじさんが時の神で右肩に置いているのが砂時計。 そして時の神の反対側(左上)にいるのが仮面をかぶった真理で、時の神が睨みをきかせているように感じます。
棘がある茎の部分が切り取られたバラの花をヴィーナスとキューピッドに投げつけようとしている悪戯坊主の頬は真っ赤っか! それほど悪気もなさそうでキューピッドの幼少期のようにも感じます。 さて問題の白い肌が印象的なヴィーナスとキューピッドは一般的に親子という間柄で要するに禁断の愛? たまたま母と息子を象徴させていますが、世間で言う禁じられた関係の男と女が求めた愛? 肌の白さからすると死の香りを伝える禁断の愛は、二人が脱ぎ捨てた仮面で成就されたのかも。 キューピッドの弓矢を右手で取り上げ左手にはトラブルの象徴と考えられる黄金のリンゴが・・
仮面をつけた真理を寄せ付けないようにしているのが時の神。 時の神の応援で禁じられた愛が成就したという風に理解したいのがエスマル。 世間の枠を超えて禁じられていた愛が成就できる時は、時の神が背後で守ってくれている? 実際のところはよく分かりませんが、“愛の勝利” というタイトルも持つこの絵から受ける単純な印象は、愛を手に入れたければ “仮面を剥げ!” という言葉かな。 自分で自分の仮面を剥いだ者だけが愛の勝利を実感できる?
聖書やギリシア神話に語られている “羊飼い(shepherd)” は音楽が好きなのか得意なのか、羊飼いという仕事(?)と楽器がセットになって描写されていることが多いように思います。 紀元前の遥か昔、イデ山に捨てられていたトロイアに生まれた王子(アレクサンドロス)を拾ったのが羊飼いでした。 その王子は成長してパリスという名の羊飼いになったという話はギリシア神話。
イデ山の洞窟で三人の美女に取り囲まれたパリスは美しさの審判を託されることになり、彼が選んだのは美の女神アフロディテ。 表現を変えるとパリス(羊飼い)は “美” すなわち音楽が好きということなのかも。 この話があって後に10年も続くことになるトロイア戦争(トロイア×スパルタ)が勃発し、パリスが生まれたトロイアはスパルタによって崩壊させられました。
また旧約聖書にみられる古代イスラエルの初代王がサウルで、二代目はダヴィデ。
この二代目ダヴィデもまた羊飼いで竪琴の名手だったという話になっていました。 サウルに続いて神の意志を実行するためサムエルが油を注いだのがダヴィデ。 神に二番目に選ばれたのが羊飼いでしかも竪琴を奏でるのが上手なダヴィデ。 ギリシア神話のパリスと旧約聖書のダヴィデに共通するのは羊飼いで音楽に長けている?
これは “眠れるヴィーナス” や “嵐” を描いたジョルジョーネ作 『田園の奏楽(Pastoral Concert)』 という絵。 先の二作品も屋外で裸になっている女性を描いたものでした。
今回もまた女性は裸! 絵の題名になっているパストラル(pastoral)は羊飼いが奏でる牧笛の音色という意味も含まれていて、田園で演奏しているこの二人の男性は羊飼いの可能性が考えられます。
羊飼いは服を着ているのに何故か二人の女性は衣服を身にまとわず、白い布を絡ませているだけ。 羊飼いのヒツジってこの裸の女性のことではないのかナンテコトを考えてしまいました。 羊飼いは従順な羊を飼いながら牧笛を吹いて、いつの間にかヒツジを裸にしてしまう特技があるとか・・ イエス・キリストも羊飼いだったですね。