悪魔の首飾り

         

エドガ・アラン・ポー原作を映画化した “世にも怪奇な物語” という三本のオムニバス映画のうちの一つで、『悪魔に首を賭けるな』 というのが本来の原作名。 しかし映画の原作名は主人公の名前 “トビー・ダミット(Toby Dammit)”。 英国の俳優トビーが、イタリアで製作される新作映画に出演するため空港に降り立ちます。

その新作映画の内容は、草原にキリストが現れる(?)のがベースになっていて キリストの実像を明確にさせることが目的であるらしく、一般人には何のことか分からない映画です。 トビーが出演する予定の映画は 『福音書の贖罪』 というタイトルがすでに付けられていました。

聖なるイメージのキリストをもっと具体的に描こうとする試みがなされ、西部劇の要素を取り入れるというますます理解しにくい映画。 実際のところトビーはイタリアには来たくなかったらしく、フラッシュを向けられ逃げ回っていました。 「明るい光はダメなんだ」という彼の言葉通り、明るい光を避けて酒に溺れていたトビー。

               

トビーが嫌いなフラッシュを浴びなければいけないパーティー会場への参加は、フェラーリを手に入れるためだけの手段だったように思います。 パーティー会場の舞台の前にプールのようなものが設置されていて、常にモヤがかかっている幻想的なツクリモノの会場に見えます。 いかにも嘘っぽい会場で眠りこけていたトビーが紹介され、初めから全くやる気はなくラリッているトビー。

映画を観ている途中で、言語の奇妙さに気付きました。 全編にわたって幻想的に彩られた映像の舞台は確かイタリア、そしてトビーは英国人のはず・・ でも登場人物が話している言葉はすべてフランス語!  Why?  しかしトビーが紹介された舞台で詩を読みあげる時だけは、母国語の英語でした。 フェリーニ監督は何かを仕掛けているようです。

トビーの幻覚症状のように突然現れる白いボールで遊んでいる白い服を着たブロンド髪の少女。 赤いマニキュアと目を半分隠している長いヘアーが印象的な、少女のような女のような少女。 トビーが頭で創り上げている少女だと思うけれど、ニヤッとする笑い顔が不気味です。 白い服を着た少女が、赤い爪先で握り締めていた白いボールには何か意味があるのか・・ 言語も映像も怪奇だらけの世にも怪奇な物語。

              

パーティー会場を抜け出したトビーは、一人フェラーリのハンドルを握って夜のローマの街に飛び出しました。 死んだような状態の街を駆け回って何かを発散しようとしていたトビー。 多くのものを破壊して彼が目指す目的地とは? 通行禁止のラインを超えて彼が手にしたかったものがあったのか・・

多くの謎と怪奇を残したまま、向こうに見えた少女に向かってフェラーリをジャンプさせたトビー。 フェラーリに乗ったまま飛んだトビーは、フェリーニ監督の手によって命を吹き込まれたように思います。 自分が乗っていた車のライトは、最後は右側しか点いていない状態でした。
            

原作に反して悪魔の少女に自分の首を賭けたのがトビー・ダミット。 ダミー人形のように奇妙な薄ら笑いを浮かべる少女に自分の首を賭けてしまったトビーは、この少女に憧れていたのではなく少女の姿をした悪魔を消したかったのではないかと感じました。

* 監督 フェデリコ・フェリーニ      * 1968年 作品
* 出演 テレンス・スタンプ

車 フェラーリのエンブレムは “跳ね馬” で、馬の前足が宙に高く舞っています。

1920年生まれのフェリーニ監督が、
34歳の時に脚本を書いて
映像化させたのが白黒のこの映画。
          
映画の初めと終わりのシーンは、
どちらも波が打ち寄せる浜辺。
明るい昼の浜辺にいたジェルソミーナは、
姉ローザが亡くなったことから貧しい家族のために
身売りして、大道芸人ザンパノに従わざるを
得ない状態に追い込まれてしましました。
ローザが死んだ原因が分かっていないけれど、ローザの
身代りにされたのがジェルソミーナのような気がします。

ジェルソミーナの母が、すでにザンパノからお金を手にしてしまっていたので 否応なしにジェルソミーナは、母が敷いた道を歩むことになります。 ザンパノの芸は 胸にまきつけた鎖を大きく息を吸い込んだ胸の膨らみで切るというもので、初めから最後までザンパノはその芸だけに集中してるというか・・それしかできないみたいです。 男にありがちなチカラを鼓舞して周りを圧倒するというタイプがザンパノ。

初めのうちはジェルソミーナも何とか(お金のため)ザンパノに従って芸のアシスタントを務めるのですが、男の余りの身勝手さにジェルソミーナの心は傷つき乱れ始めます。 傷心のジェルソミーナがじっと見つめていたのが、地元で開催された祭りの余興(綱渡り)に出演していたイルマットという男。

   彼は人を小馬鹿にしたようにケタケタとよく笑います。
   ラッパで美しい音楽を奏でることができたイルマットは、
   ジュリエッタの支えになろうとしていました。
   荒くれ者のザンパノに従い、自分は何もできないと嘆く
   ジュリエッタに 彼は優しく接します。
   同じ男でも全く違うタイプのザンパノとイルマット。

   ザンパノはイルマットの存在に苛立っていて、
   車で移動中にたまたま道でイルマットに出会ったことが悲劇の始まりでした。 ザンパノに殴りつけられたイルマットは死に、その後イルマットの死体や彼の車の処理をしているザンパノを 一部始終見ていたジュリエッタの精神がこの事件を機に侵され始めます。

ザンパノもどことなく変なジュリエッタに気付き、彼の荒々しさに変化が感じられるようになります。 道の途中 まだ雪が解けずに残っていた村で、ジュリエッタは車を降りて壁のそばに寝ころびました。 死を受け入れようとしている彼女の静かで穏やかな心が伝わってきます。 ザンパノもそれを察したのか、彼女を残して車に乗り込みました。 そのとき、ジュリエッタのそばで焚き木の炎が上がっていたことを思うと ザンパノが本来持っていた優しさがこの時に表面化したのでしょう。

ジェルソミーナがラッパで奏でていたメロディは、イルマットに教わったものでした。 ザンパノが芸をするために訪れた海辺に近い村で、このメロディを口ずさんでいた女性から その後のジェルソミーナのことを聞いたザンパノは、暗くなった夜の浜辺で声をあげて泣きます。 ザンパノの自分を守るための荒々しさは、イルマットとジェルソミーナによってしだいに変化してきたように感じました。

* 監督 フェデリコ・フェリーニ       * 1954年 作品
* 出演 アンソニー・クイン   ジュリエッタ・マシーナ   リチャード・ベイスハート

月 荒々しく人を従属させるだけの世界は、ジェルソミーナが吹いた心に響くラッパのようなメロディを誕生させることはできません。

カビリアの夜


「こんな人生にはもうウンザリよ・・生きていたくないっ」
自分の余りの馬鹿さ加減でカビリアは叫びました。
このとき彼女は、
また男に騙されていたことを知りました。

カビリアの仕事は娼婦・・
自分のカラダでお金儲けをしているので、
映画に登場していた男のようにお金を盗んだりはしていません。 カラダを張って生きてきたカリビアは、いつか好きな男と一緒に結婚生活を送ることを夢見ています。 
そんな夢を次々に崩していく男たち・・
しかも女からお金を巻き上げようとする男。
        
しかしカビリアは相手の男を責めずに、自分一人でもがき苦しんでいるだけ・・同僚の女たちからも小馬鹿にされながら それでも結婚生活に彼女の視点は注がれています。

この映画の始まりも好きな彼とカケッコをした後、川に突き落とされお金の入った大切なバッグを盗まれたカビリアでした。 男に騙されている現実は分かっていても、つい自分に優しくしてくれる男に付いて行きたくなるのかな・・娼婦カビリアの目的地は好きな人と一緒に過ごすことができる結婚生活。

仕事は娼婦でタバコプカプカだけれど、心は少女のままの女がカビリア。
だから要領よく適当に心にもないことを言ってカラダを売り、お金儲けを優先させることは きっとできないと思います。

男に騙されるという同じ失敗を何度かくり返しているうちに、マリア様が手を差しのべてくれることを祈りたい気分にさせられます。 カビリアを放っておかないで!  カビリアに朝を!
      
ダラダラと意味もなく人生を長く生きるより 暗闇の中で光を見いだすことの方が 生きた実感を味わうことができるはず・・でもずっと続く暗い夜はイヤですね。

自分の都合だけで成り立っている社会で、追い詰められ傷ついても自分で泣いているだけの バカなカビリアに目を向けることができるマシな男がいることを願います。
ラストでカビリアは叫びました。 「お金ね・・やっぱりお金!」

* 監督 フェデリコ・フェリーニ    * 1957年 作品
* 出演 ジュリエッタ・マシーナ    フランソワ・ペリエ

パー カビリアを演じたジュリエッタ・マシーナはフェリーニ監督の奥さん。

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