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- 2022.04.05 Tuesday
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南米のどこかに設定された架空の独裁国家パラドールを舞台に不可能な夢を現実に体験し主役を演じた映画俳優の夢物語。銀幕の中ではイマイチだった俳優ジャック・ノアは独裁者(シムス大統領)と瓜二つだったことで、突然死んだ大統領を演じる羽目に・・ そしてその役を強引に与えたのが結果的にシムスを死に追いやったロベルト総督。シムスの直接の死因は心臓発作・・ しかしその直前ロベルトはある女と結婚したいと言っていた彼を怒鳴りつけています。その異様な雰囲気に息が詰まり、そのまま死んでしまったのが操り人形としてパラドールの大統領をこなしていたシムス。絶対的権力の継続を求めるロベルトとそれを拒否するジャック。“演じなければお前を殺す”と脅かされたジャックはロベルトの指示に従いその指名(使命)を引き受けることに・・
日本ではビデオのみでDVDになっていないポール・マザースキー(1930年生まれ)監督の佳作で、" ハリーとトント”や“敵・ある愛の物語”など他にもいい作品が多いのに日本では余り注目されていない。また俳優でもあったマザースキーはシムスのママ役でこの映画に出演しています。女装好きだったのか、舞台で♪リリーマルレーン♪を歌った変な女性もマザースキーっぽい感じ。どちらも男マルワカリの変なおばちゃんで、妙に脳に焼き付いて離れない! シムスになりきっていたジャックをママは偽者だと見破ることができたのかどうか・・ その点、大統領の使用人はみんな偽者だと分かったうえで口をつぐんでいました。相手がホンモノであろうがなかろうが、自分たちの仕事の方が大事。
ジャックが独裁者の代役を演じ続けて一年が経ち、再びカーニバルの日を迎えます。
シムスの友人として招かれていたサミー・デイヴィスJr.の一年前の歌が♪ビギン・ザ・ビギン(Begin the Beguine)♪。ビギンを始めようという意味の歌で、マルティニク(カリブ海に浮かぶ西インド諸島の一島)のダンス音楽が『Beguine』。そしてそれから一年後のカーニバルでサミーが歌ったのがパラドールの国歌(ベサメ・ムーチョのメロディ)。マザースキーが女装した何でもありの映画の中には何でもありの替え歌が挿入されていました。何でもありの映画は必ず終りがあり、何でもありの夢も必ず終わる。しかし何でもありをヨシとしない厳しい現実は終りが見えない。
映画という虚構の中で主人公の俳優が演じることになるのが大統領という役。その役を終え故郷に戻るためには自分が誰かに殺されなければいけなかったようで、そんな彼の殺害を受け持ったのが映画で爆破を担当していたクリント。秘密の天国にたとえられたパラドールで過ごした時間はジャックにとってもマドンナにとっても現実逃避の夢時間。いつまでも夢を見続けるわけにはいかなかった二人は別れを決意し、それぞれの道を歩み始めます。テレビに映るマドンナはこれからのパラドールを背負って立つ大統領。パラドールにかかる月をバックに抱擁して別れたジャックとマドンナは不可能な夢を確かに見たんだろうと思う。夢から覚めた二人を待ち受けていたのが次の仕事。生きている間はなかなか落ち着けないのが現実かな。
* 監督 ポール・マザースキー * 1988年(米)作品
* 出演 リチャード・ドレイファス ラウル・ジュリア ソニア・ブラガ
★ 時の経過に屈しない深い内容の映画。