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- 2022.04.05 Tuesday
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親からもらった名前はジェフ・リボウスキ。しかし当の本人はこの本名を使わず自称デュード(カッコいい男)で世間を渡っていました。外見は完璧な無精者で、デュード的雰囲気は100%ない。米国西海岸(天使の町という風に設定されている)に住んでいた彼を紹介するのが映画の進行役となるストレンジャー(ひと癖ある人物)で、物語の最後を締めくくるのもこのストレンジャー。仕事もせずボーリング大会で優勝することだけを考えているプータローことデュードが同姓同名の大富豪に間違われたことで巻き込まれていくハードボイルド的ユーモア映画。
話の発端はデュードが部屋のアクセントにしていた敷物を侵入者によって汚されたこと。もう一人のリボウスキと勘違いされたデュードは同姓同名ゆえの被害をこうむることになります。彼の部屋の唯一のこだわりが尻に敷く敷物。ウォルターの入れ知恵で敷物を弁償してもらうためデュードが訪れたのが金持ちリボウスキ。名前は同じでもタイプが違う二人のズレた会話は笑える。デュードに対して社会の落ちこぼれと激しく罵るリボウスキ氏・・しかしデュードは口うるさい相手を無視して売られた喧嘩を買おうとはしない。そんな彼の態度(代わりの敷物を屋敷からゲットするだけ)はビッグだと思う。外見(すね毛ボーボーの短パンにヨレヨレシャツ)はカッコ悪いけれど、脳の中身は飛んでる感じ。
冒頭で語られたシブイ声の雰囲気はどこかに消え失せ、後半ではふざけ要素が多くなっていきます。他のコーエン兄弟作品は観てもこの映画だけは好きになれないという人がいるかもしれないけれど、登場人物の個性という点では魅力的な映画。普通の人や一般常識が入り込めない身勝手な空気が全編に漂い、現実と夢が混沌としながらも成立しているような感じ。特に頭を殴られたデュードがボーリングの玉になって転がっていくシーンが面白い。
印象的だったのが入浴中のデュード。バスタブのそばに置かれていたのが、いくつかの蝋燭(多分香り付き)で、カッコ悪かったデュードが一気におしゃれなデュードになったのがこの瞬間でした。スーパーでも匂いを嗅ぐ癖があったみたいで、敷物と香りにうるさいのがデュードかな。ファッションはイマイチだけれど優しそうな性格が好き。無職で貧乏そうだけれど、金銭トラブルだけは引き起こさないのがデュード。彼のそばにはいつもストレンジャーがついているのでヤヤコシイ事態が発生する可能性は少ないはず、もてそうでやはりモテル男がカッコイイ男。
* 監督・製作・脚本 ジョエル&イーサン・コーエン * 1998年(米)作品
* 出演 ジェフ・ブリッジス ジョン・グッドマン ジュリアン・ムーア
★ ストライクゾーンに入るボールはまず真っ直ぐに進みながら、その少し手前で曲がります。
YouTube - The Big Lebowski The Dudes Song
後ろ髪だけでは男か女か区別がつかないマッシュルームヘアーの殺人鬼アントン・シガーが思いっきり怖いっ! 拳銃を使わないシガーが殺人に際し使用するのは肺気腫患者が使う酸素ボンベとホース。ボンベから注入された高圧力の空気が頑丈なドアや人間の眉間をぶち抜くサマは想像を絶するぐらいコワイ〜。しかし殺しの映画スタイルとしてはカッコ悪いかも。自分の目の前にポカンと立っているシガーが何をしようとしているのか相手も理解できないまま、一瞬で殺されてしまうこの状況はどう考えても理解しがたい。
偶然出くわした殺人現場で大金を横領した男モスとそのモスを追いかける殺人鬼シガーの追跡劇が中心になっています。どちらも諦めないタイプの男で、互いに撃たれて血が流れても逃走と追跡は続きます。国境を超えメキシコに逃れたモスは病院で手当てを受けていたのに対して、シガーは救急車も呼ばず(殺人鬼だから当然?)自分流で自分に施す手当てで自分を再生させています。この手当てシーンがこれまた怖くて痛そう。殺人場面より痛くて怖いのが盗んだ薬や注射で施したオリジナル手当て。
社会と接点を持ちたくない異様さと同時に他人に一切頼らず自分で自分の傷を治す手段を身に付けていたのがシガー?
額の真ん中を撃たれたのに弾が貫通した跡がないという事実に面食らうベルと若い保安官との会話。 「撃った男の頭から弾をほじり出したのか?」と言うベルに対して「想像したくない」と言う若い保安官。表情が曇る二人は想像できない事実に対峙したまま理解の枠を超えて起こる殺人に戸惑うだけ。まさか武器が酸素ボンベと思うはずもなく、弾がない死体に悩むベルの表情がおかしかった。
追う者と追われる者の勝負に決着がついても安心を手にすることができない社会を憂うベル。一方生き延びたシガーが訪れたのがモスの妻。コイン投げで生かすか殺すかを決めてきたシガーは彼女に表が出るか裏が出るかを当てさせようとします。
「それを決めるのはあなたよ」という彼女の言葉にシガーはどう反応したのか・・
映像では表現されないまま家から出て来たシガーの乗った車は交差点で真横(右)から飛び出してきた車と衝突。骨が見える腕から血を流すシガーを心配そうに見つめる二人の少年。少年の一人からシャツを譲ってもらったシガーはそのシャツで腕を支え逃走。モスも自分の傷を隠すため三人の若者から上着を高い値段で買ってました。
* 監督・脚本 ジョエル&イーサン・コーエン * 2007年(米)作品
* 出演 トミー・リー・ジョーンズ ハビエル・バルデム ジョシュ・ブローリン
★ マッシュルームヘアーにはしたくない!
ミシシッピ川の河口に浮かぶゴミ捨て島に向かうゴミ収集船に投げ捨てられる盗人たちの映画。オープニングで映し出される橋の下を通るゴミ収集船を真上から眺める映像がその後何度も象徴的に繰り返されます。多くのゴミを積んだ船を上から監視しているような雰囲気のカラスも重要な役割を果たしているような・・そしてもう一匹、黒人婆ちゃんマンソンが飼っていた猫(ピクルス)も盗人たちの行動を直視していました。さらにこの世にはいないはずのマンソンの旦那さん(オーサー)の肖像画も悪巧み行為の一部始終をチェック! 毎週教会に行く習慣のマンソン婆は猫と死んだ旦那に守られていたように思います。
主人公は自ら教授と名乗る胡散臭い男で、トム・ハンクスの怪演が光っています。
何かと御託を並べる教授の裏の顔はカジノ船とつながっている地下金庫から金を強奪する計画のバラバラ盗人集団のリーダー。口がうまい教授は知的紳士を装いルネサンス後期の音楽を追求する音楽家だと言いながら、実際は音楽よりエドガー・アラン・ポーの詩を好んでいます。さすらい人を受け入れ故郷の岸辺まで運んでくれた詩の中の愛しいヘレンに憧れているドア教授はこの詩だけを記憶しているロマンチスト。
「ヘレンって誰よ!」というマンソンの問いかけに答えず自分だけの世界で酒も飲まずに酔っている教授はやはり胡散臭い。
彼はマンソン宅の地下室をアンサンブル練習場所として間借りし、そこから穴を掘って地下金庫に眠る金を奪う計画を立てていました。そしてそこに集結したのが能力も背景も異なる4人の男たち。それぞれ癖がある男集団を率いる教授が初めてマンソン宅を訪れた際、初対面だったピクルスは教授の真実を早くから見抜き木の上に登って近付く教授を威嚇。その後もこのピクルスくん・・飼い主のマンソン婆が危険にさらされた時も大活躍します。
後半の一人ずつ消えていく構成がオモシロク、リズミカルに手際よくゴミになってゴミ収集船に投げ捨てられていく5人の盗人。それらを傍でジッと眺めていたのが賢いピクルスくん。特に最後のシーンで地下室に残されていた切り取られた指をキチンとゴミ船まで運ぶピクルスには笑える。殺されそうな状態にあったマンソン婆を結果的に助けたのは神の息がかかったピクルスと死んだ旦那オーサー。特に教授が橋から落ちるキッカケを作ったのが橋の上でウロウロしながらゴミを狙っていたカラス。カラスの尽力もありマンソン邸の地下室に残された大金はマンソン婆のものに・・
マンソン婆を上手に騙したつもりで結局は失敗した教授が女たらしに一番近いカナ。
あるいは完全犯罪に待ったをかけたマンソン婆を消そうとする男たちがマンソン婆を消さずに自分たちが消えた映画ということで女性的傾向にある男集団がレディ・キラーズ? 教授が掲載した新聞広告で集まったレディ・キラーズは一人残らずゴミの島に向かうゴミ収集船に落ちて消えました。
* 監督・脚本 ジョエル&イーサン・コーエン * 2004年(米)作品
* 出演 トム・ハンクス イルマ・P・ホール
★ 迫力ある黒人たちの教会サウンドはヨカッタ!