日本の塔で思いつくのは三重塔・五重塔そして七・九・十一の塔は余り知らなくて、十三重の塔は比較的多いように思います。 二重塔や四重塔はなく、日本の塔はほとんどが奇数である陽の数で建てられています。
奇数は割り切れないように このことにも幾分割り切れない気分!
しかし “多宝塔” と呼ばれている塔は、見たところ間違いなく偶数の “二重の塔” に見えます。 それに、他の塔より低いはずなのに “多” という漢字が使われているのも気になるところです。
キッチリ割り切れる偶数は陰の数。 天地の二元素の “陽” に対して “陰” は地・女・月・夜・静・柔などの性質を表します。 また奇数の塔は下から同じカタチの塔が重なっているのに対して、多宝塔は下が方形そして上が円形という異なるカタチのもので構成されています。 一般的に仏塔は、仏教伝来とともに日本にもたらされました。
しかし多宝塔を形成する二層塔は、日本独自の形式で建てられたものでした。
多宝塔の丁度中央部にあるのが “亀腹” で、白い漆喰で塗り固められた円筒形部分をこのように呼んでいます。 亀腹をよく見ると、何かを孕んでいるようにモコッとしていて 妊娠している女性のオナカのようにも感じられるのですが・・ 割り切れる偶数で建てられた女性的な二重塔が、多宝塔であるように思います。
“孕む” といってもいろいろ孕むものによって、人に与える空気が変わります。
たとえば、誘惑・可能性・リスク・風・子・矛盾・・・風を孕むと帆船がイメージされます。
周りは何の目印もない海を舞台に方向を見定めるためには、風の動きを読まなければいけません。 また和船(木の船)で、帆柱の根元を差し込むために船底に取り付けられた受け座を“子持”と呼びます。 この箇所も外見的には見えませんが、船の進行にはとても大切!
陰で努力や苦労をしてくれている人のことを “縁の下の力持ち”と言いました。 人の交わりの中で、縁の下の力持ちに出会うことができれば 船は目的地に到着できるはず。
見えないけれど陰で力になって何かを孕んでいそうなのが “多宝塔”。
たとえリスクや矛盾が孕んでいても自分の心に従って突き進んでいく人もいます。
甘い誘惑なら殿方の媚薬になって若返りパワーが発揮されるかも!
風・可能性・子などは生きていくうえで大きなエネルギーになる要素なので、孕んでいる方がいいのでしょう。 このように孕んでいるものは外側からは見えません。
外見的に多宝塔を観察すると、上層部の屋根の上に相輪を立て四隅に鎖をかけて 華やかな装飾が施されています。 日本では平安前期から造られ 現存するものでは鎌倉時代建立の石山寺の多宝塔が最古のものとされています。
ここは紫式部が女たらしで有名な光源氏を主人公にした源氏物語の着想を得た場所として知られています。 やはり男と女の秘密が隠されているような・・・クンクン
だって本堂と多宝塔は日本国の宝なんですよ!
亀腹を支えているのは、縁(円)の下の力持ちの役割を担当する地に着いた方形。
多宝塔のオナカ(亀腹)に孕まれている宝物は、すぐ下にくっついて縁の下の力持ちがいてくれたから・・